清純には慣れておりません

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咲子は一人で着物を着た事がない重要な事実を、もうすっかり忘れている。 桐のタンスから着物を取り出しハンガーへかけ、まずは長襦袢に取り掛かった。 いざ自分で着始めると、何だかすっかり色々な事を忘れている。 中の襦袢って、こんな風に巻いて着る物だったっけ? でも、下着みたいなものだから、着物さえちゃんと着れれば大丈夫よね…? 自問自答を繰り返し、必死に自分を慰めた。 でも、咲子は、想像以上に時間がかかっている事に究極に焦り始める。 …マズい、マズい、マズいかもしれない。 咲子は気が焦っているせいで帯の巻き方が思い出せない。 元々ちゃんと覚えていたのかと聞かれれば、それも定かではないけれど。 でも、そんなマイナスな事を今は思い出したくなかった。 咲子は冷や汗をかきながら、必死に頑張った。 …咲子、落ち着いて。 大丈夫よ、ちゃんと間に合うから。 でも、時計を見ると絶望的になる。 …あ~、神様、こんなおっちょこちょいの私を助けてください。
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