清純には慣れておりません

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映司は天井を見上げた。 こんなにも予測不可能な女性は初めてかもしれない。 俺が相手をしてきた女性は、皆スマートで俺の手を煩わす事なんてほとんどなかった。 でも、咲子様は、何もかもが新しい。 未知の領域の宇宙人みたいに… 映司が玄関まで歩いて行くと、やっと咲子が姿を見せた。 手には紙袋を持っている。 「堀江様、こ、これを… 私の大好きなお饅頭なんです。 堀江様のお口に合えばよいのですけれど…」 咲子のはにかみながら渡すその姿に、映司は映司の中の悪いものが全て洗い流されるようなそんな気持ちになった。 これが大和撫子? 清純な女性? お饅頭を持って微笑む咲子様が可愛くってしょうがないなんて、俺こそどうなってしまったんだ? 映司は自分の可笑しさにフッと笑ってしまった。 「咲子様、一週間後にまた会いましょう。 今度はランチでもしながら。 楽しみに待っています」 楽しみが過ぎて、一週間も待てないかもしれないけれど。 映司はそんならしくない事を考えながら、咲子のいる小さな事務所を後にした。
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