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咲子は自分の地味でつまらない人生を顧みて、何だか胸が痛くなった。
中学生の頃、咲子は、自分は鳥かごに住む囲われた小鳥みたいだと生まれた境遇に何度も涙した。
自由という言葉にいつも憧れていた。
でも、自分が本当の意味で自由だったとしても、こんな素敵な場所で働くなんて到底無理な事くらいは分かっている。
ここは、そういう場所。
だからこそ憧れるし、羨ましくてしょうがない。
咲子はいつの間にかエレベーターに乗り込んで、どこか知らないフロアに立っていた。
自分の見聞をもっと広げたい。
こういう輝く世界へ大きく羽ばたきたい。
大きな窓ガラスから見える東京の景色を見ながら、咲子は涙ぐんだ。
自分の涙もろさにはほとほと嫌気がさすけれど、でも、こんな性格なのだからしょうがない。
それに、こんなに感動したのは久しぶりだもの…
今日の日は絶対に忘れない…
咲子は自分の世界に入ってしまい、映司の事も待ち合わせの事もすっかり忘れていた。
外の景色をぼんやりと見ていると、誰かが咲子の名前を呼んだ。
「七条咲子さんですよね…？」
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