この試練、乗り超えてみせます

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咲子はそう言いながらも何度も時間を確認している。 映司は小さくため息をつき、そして、主導権を咲子に渡した。 夕食は創作系の日本料理だった。 映司は気を利かして、店の人にコースの後のデザートには緑茶をお願いしたくらいだ。 そのお店が入っているビルには、カフェのようなリーズナブルな店はない。 映司はつかつかと前を歩く咲子を見ながら、少し不安になっていた。 「咲子ちゃん、ちょっとタクシーに乗ろうか? この辺ってあまりお店がないからさ…」 咲子は慣れないスマホで何の情報を見ているのか、映司の言葉はスルーしてただひたすら歩いている。 すると、道路の左側に川が見えてきて、咲子はその川沿いへ下りる階段を楽しそうに駆け下りて行った。 映司も慌ててその後に続くと、そこは小さな公園になっていた。 川の水面が少しだけライトアップされていて、川沿いにベンチが数個置いてある。 「映司さん、ここへ座ってください」 「ここ…?」 「はい、ここです」 映司にとって咲子とは未知との遭遇で、もしかしたら、このベンチに座るとUFOに吸い込まれるのかもしれない。 そして、カフェまで連れて行ってくれるとか? 映司は、いやいやと苦笑いしながら、自問自答する始末だ。 それくらい、映司にとって咲子の行動は謎だった。
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