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「私の住んでいるマンションは祖父の持ち物です。
以前は叔父が仕事場として使っていたものを、少し改築して私が住めるよう手直ししてくれました。
その時に、祖父がというより、父がなんですけれど、監視カメラを取り付ける事を条件に出してきて。
私はそれでもいいと思い、その条件を飲んで一人暮らしを始めたんです」
映司は愕然とした。
自由奔放な環境で育った映司にとって、その咲子の環境は牢獄と同じだ。
次から次へと驚かされる事ばかりで、映司の精神は疲弊していた。
「その監視カメラはどこにあるんだ?」
映司は必死の思いでそう聞いた。
「玄関と寝室です。
そして、門限が9時で、それはちゃんと守らないと、全部カメラに映ってしまいますから」
咲子は自分で門限というワードを使い、また慌てて時計を見る。
「映司さん、ごめんなさい。
私、もうすぐしたら帰らなければいけません。
ここから、マンションまでは30分はかかるので」
映司もつられて時計を見てみる。
確かに、もう8時半を回ろうとしていた。
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