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「でも、おじい様は、今の時代、皇太子様だって自由恋愛を選ぶ時代だって。
だから、咲子がその約束に縛られる必要はないって言ってくれるんです。
でも、お父様達はそうじゃない。
機会があれば、ぜひ、うちの咲子をって思っている…」
「だから、その機会をなくすんだ。
咲子ちゃんは皇太子様の返事を待つ間にいい人が見つかり、その人と幸せな結婚をしたそうです。チャンチャン。
それでいいんじゃない?」
咲子はそんな風に微笑む映司に抱きついた。
「ご両親にどうにかして分かってもらうしかないな。
堀江映司がどれだけ素晴らしい人間かっていう事をね」
映司はしくしく泣いている咲子の頬に優しくキスをした。
極上のシルクは抱きしめる俺にとっても、最高の肌触りだ。
映司の性格は、イタリアの母親にかなり寄っている。
確かに美貌も地位も名声も財産も、全てを手に入れてしまった環境もあるけれど、でも、根っこが陽気で前向きで自信家だ。
だから、咲子の件についても、何も怖いものなどなかった。
あともう少ししたら結婚を認めてもらい、晴れて咲子を抱く事ができる。
でも、そんな風に楽観視しているのも今だけだった。
咲子のネグリジェに顔をうずめてゴロゴロしている映司は、この後に地獄を味わう事になる。
不可抗力という映司には手に負えない大きな力が、もう、すぐそこに迫っていた。
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