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第一章 ソー視点 依頼終了の晩酌・・・という名の食事
「お兄ちゃーん
今日の晩ご飯、どうする?」
「たまにはギルドの中で食うか
何がいい?」
「じゃあコーンサラダとナノスープ」
「そんな料理じゃ力つかないぞ
ダイエットか?」
「やかましい
・・・じゃあチキンフライ追加でー」
俺は分かっている、どうせ俺が頼んだ料理すらも、『味見』と称して食われる事を。
でもまぁ、ガリガリに痩せている女性よりも、しっかり食べてくれる女性の方が、一緒にいて安心できる。
何より俺達『ハンター』は体力が命。魔物と戦う為には、どんな強い武器や防具を身につけていたとしても、自分自身の力量がなければ何の意味もない。
体力が減って魔物に先手を取られてしまったとしても、それは自己責任として済まされてしまう。それがハンターの世界。
一人一人の力量もスタミナも違う、だから自分の身を守れるのは自分自身。他者に自分の体力を分ける事ができたら、それはそれで便利ではあるど・・・。
ついこの前も、ギルドで『魔術師ハンター』を生業としていた男女グループ数名が、魔物達に敗戦した。
数人はどうにか国に戻って来る事はできたけど、残りの数名に関しては、もう助からないか、手遅れだそう。
最近名を馳せていた魔術師ハンター団の敗戦に、国は大きくどよめいていた。
敗戦の原因が、気持ちの油断からだったのか、それとも、最近日に日に強さを増している魔物達が原因なのか、それすらもわからないまま。
俺や妹の『ルド』も、薄々分かっていた。魔物の強さも数も、最近目に見えて厄介になっている事に。
俺達に色々とアドバイスをしてくれた先輩ハンターでさえも、重傷を負って引退したくらいだ。
国の兵士達もだいぶ手を焼いている様子で、ボロボロになった兵士達が城に帰って来る光景にも見慣れてしまった。
今はどの国でも、強くなった大量の魔物の対処に追われている。ハンターを生業としている俺達も、最近は大忙しの毎日だ。
仕事が沢山もらえるのは喜ばしい事ではあるけど、それと引き換えに、俺達は身を危険に晒している。
最近では、自分達の力量に合わない仕事ですら押し付けられそうになっていた。
本来ハンター達は、自分達の力量に合うか、少々低めの依頼を引き受けるのが安全策。
力量に合わない仕事を引き受けてしまうと、後悔先に立たずな状況になってしまうから。
でも最近は、難易度の高い依頼を引き受けてくれるハンターが少ない事から、俺達にその厄介が回ってくる。
元々俺達が住むこの『メイル国』は、他の国に比べると小規模なうえに、ハンターの数も少ない。
だからこのギルドに来るハンター達は、全員顔馴染み。皆と比べると比較的若い俺や妹を、先輩ハンター達は可愛がってくれた。
その先輩達も、最近多発している魔物事件の解決に追われ、なかなかギルド内で会う事はなくなっている。
ついこの前まで活気に溢れていたギルド内も、今は心なしか静かな気がした。
ギルド食堂を担当しているお婆さん達も、あくびをしながら眠気と闘っている。退屈しのぎのおまけに、デザートを只でご馳走してくれた。
さっきまであれほど食べる事を渋っていた妹の面影はすっかり消え、むしゃむしゃと食事を食べる姿に、俺は安心してしまう。
女性の体重に関する価値観はよく分からないけど、あんまり痩せ過ぎたり、食べない女性は、一緒にいて心配になる。
前に男の先輩にもそんな話をすると、俺の意見を共感してくれた。まぁ、だからといって、俺は彼女を作る気なんて毛頭無い。
いつ命を落としてもおかしくない職に就いている事も理由の一つだけど、何より今の生活で十分満足している。
男の先輩の失恋話を聞くだけでも面倒くさいのに、いざ自分が女性を支える側となると、面倒くさいでは済まされない。
ただでさえ、今の魔物の対処だけでも面倒くさいのに・・・。
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