第一章 ソー視点 依頼終了の晩酌・・・という名の食事

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「そういえばさ、兄さん」 「ん?」 「今日の依頼の報酬は?」 「2800Nyだ」 「わぁ、結構多めじゃん  それだけで数週間は楽できるよ」 魔物事情が深刻になれば、俺達ハンターの需要も増える。危険も増すけど、その分報酬も多くなっていた。 二人の将来を考えて、報酬の半分は貯めるようにしている。 いつ体を壊しても、残りの人生を全うできる程のお金は貯めておかないと、後々泣き寝入りをするのは俺達自身だ。 身一つの商売は、裏を返すと身が壊れるとその時点でハンターは引退しないといけない。 ハンターの中には、不自由な体でも魔物退治に勤しんでいる人がいないわけでもないけど、彼らの場合、しっかり訓練や努力を重ねている。 でもその訓練や努力は、俺達のような並の人間では、到底追いつけない程厳しい。 それに、俺達を産み育ててくれた両親の事を考えれば、きちんとした体のままで墓に入る事が、親孝行の一環でもあると、俺は考えている。 だからこそ、俺達はどんなに小さくて短時間で済む依頼でも、細心の注意を払っていた。 そして、いつかハンターを引退した後には、兄妹二人きりで、のんびりと静かな余生を謳歌したい。 引退するにしても、『怪我』ではなく『老い』を理由にしたい。 まだ二十歳にもなってない俺がこんな事を考えているのは、さすがに気持ち悪いと思われてもしかたない。 けど、俺・・・だけではなく、俺達兄妹にとって、『生きる』事の大切さが人一倍強い。 だったら何故ハンターに入団したのかを問われる事もあるけど、俺達だって、無計画でこの職に就いているわけではない。 計画があるからこそ、節約も貯金も、将来の事もちゃんと考えている。 まだ親戚の中には、「『ハンター』なんて野蛮な職、今すぐ辞めなさい!」と、強引に詰め寄られる事もある。 俺達はそんな親戚の意見を、いつも突き返している。 「なら、今の平和な暮らしを、誰が維持するの?」 「魔物被害が大きくならないのは、誰のおかげ?」 俺達がそう言うと、その親戚はあっさりと引いてくれた。
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