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恐怖という名の感情が蘇った時、足は止まった。
でも、絶望するのはその後だった。
足取りを進めず、その場に立ち尽くす自分に黒いスーツ姿の男性が携帯を片手に重い音を立てながら向かってくる。
一歩、二歩と近づいてくるその人は恐怖でしかなかった。
目の前に来た時、僕の心を真っ黒にした。
僕をすり抜けていく……
振り返れば、何事もなかったかのように携帯を見つめながら建物へと姿を消した。
いったい、僕は何者なんだ……
誰にも見られず、気付かれない僕は、一体何なんだ。
胸が押しつぶされそうになるのをこらえるかのように僕は走り出した。
どこでもいい。目的地もなく走る僕は涙が止まらなかった。
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