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「あの、大丈夫ですか」
耳に透き通った心地いい声が聞こえる。
その声は、目の前にいる彼女からだった。
はっと息を呑んで、彼女の顔を見た。その彼女の瞳は真っ直ぐに僕を見つめている。
「どうして……」
その一言が精一杯だった。
「だって、さっきからずっとここに座り続けてるじゃない。頭を抱えたまま」
その彼女の声は、僕の心を外からゆっくりと温めていく。
安心感でも、喜びでもない、温かい気持ちだった。
「君には見えているの?この僕が」
冗談交じりのような口振りで言うと、彼女はなぜか瞳を僕に向けたまま、微笑んだ。
「だって、今ここにいるもの。見えてない人なんていない」
彼女の答えに僕は一粒目から雫を落とした。笑いながら。
彼女は僕の隣に座って顔を覗き込んだ。
見知らぬ人に声をかけるなんてなんて純粋なんだと思いながらも、僕は彼女が隣にいることを受け入れた。
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