気弱な僕と朝歩くおじいちゃんの話

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朝出勤するとおじいちゃんが歩いていた。 足が不自由なのか、杖を突いて歩いている。 何ともぎこちない。 だけどゆっくりゆっくと進んでいく。 仕事に行くたびに僕はおじいちゃんを見た。 毎日毎日決まった時間に歩くおじいちゃん。 1ヵ月もすると心なしかじょじょにぎこちなさは少なくなり、スピードが上がっていく。 気弱な僕は声はかけれなかったけれど、心ではいつも応援していた。 もっと早くもっと、いやいつかは・・・。 だけど数か月もすると突然おじいちゃんを見かけなくなった。 もう諦めてしまったのだろうか? ちょっぴり寂しく悲しくなっていた僕。 でもそうじゃなかった。 僕は昼休みお弁当を買いに行く時におじいちゃんを見た。 杖なくぎこちなく歩くおじいちゃんを見て涙ぐんだ。 あぁおじいちゃんはついにやったんだ。 ずっと歩き続け、杖を手放したおじいちゃん。 強固な意志とたゆまぬ努力が可能性を掴んだんだ。 ゆっくりと遠ざかるおじいちゃんを見ながら僕はこの事を忘れないでいようと心に誓った。
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