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彼は空を見上げながら歩く。
ギリシャ神話では大熊のしっぽに見立てられる北斗七星もいいが、この時期なんと言ってもおすすめなのははくちょう座だ。
南天にひときわ輝く一等星のデネブを頭に五つの星が羽根を広げた白鳥を象る。その形が十字架をイメージさせることからこんな二つ名がある。
ノーザンクロス、北十字星。
彼の生まれ育った場所からこの星は見えない。代わりに象徴として国旗にも採用されているのが南十字星。昔の船乗りが航海の道しるべとした星座だ。
南十字星に比べ暗い北十字星。それが目的地に近づくにつれ徐々に見づらくなる。
昼間のような明るさで、建物の内側を照らす照明にかき消されて。
さいたまスタジアム2002。
ワールドカップの会場ともなった四万人収容の由緒正しき球技場。
止まったままになっていた日本サッカーの時計の針を動かすのにこれ以上の舞台はないだろう。
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