変わってしまった

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変わってしまった

私も新社会人としての新しい生活が始まり、彼も会社の状況が一気に変化した。 恋人という立場になったものの、肉体関係を結んだのはたった1度だけ。 ラインでのやりとりが中心になり、近況報告を兼ねた食事をすることだけのデートばかりを重ねていた。 新人研修が落ち着いた6月。鎌倉に行った。彼のリクエストだった。 1つ1000円以上もするジェラートをビクビクしながら二人で分け合って食べたあと、紫陽花が有名なお寺を二人で手を繋いで登った。 その時に言われたのが「しばらく会えなくなる」ということ。 会社を立て直すことに集中しないといけない、本当に申し訳ないと頭を下げられてしまい、私は何も言えなかった。 この時、私も社長に聞いて欲しいことがたくさんあった。 せめて姿だけでも見られれば、声だけでも聞ければ、それだけで次の日も頑張ろうって思えたはず。 せめて15分でも話したい。 会いたい。 私の話を聞いて。 言いたいことが喉に突っかかって、唾と共にお腹に押し込まれる。 彼の悲しい顔だけは、どんな困り顔よりもずっと見たくないものだったので、私は「大丈夫です」の一言だけ返し、無言でそれぞれ家路についた。 それからの1年、ほとんど連絡取らないまま、今日まで来てしまった。
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