誘い誘われ

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誘い誘われ

せめて、飲むなら片付けくらいして帰れ……! 終電間近で、皆が次々と 「ようしもう一軒いくぞ!」 と言ってぞろぞろと 会社を出て行った。どれだけ飲むんだろう……。 残ったのが私と社長だけ。 「やれやれ」 と言いながら、他の人間が食い散らかした後を片づけを始める。 私もそれに続く。 「最後の最後まですみませんね。」 「もう慣れました」 半ば諦めの気持ちで呟くと 「君がいなくなるのは、本当に寂しくなりますね」 「そんなこと言って、私のこと社員としては雇用できないって言ったじゃないですか」 就活の時、周囲がインターン先から次々内定をもらっているうのを見たので、私も社長に直談判したことがあった。まさか、少しの猶予もなく却下と言われるとは思わなかった。その時のことは、 「こんなに頑張ってもこの会社の社員として認めてもらえないのか……!」 と悲しくなり、家のぬいぐるみに八つ当たりしたのでよく覚えている。その証拠に、ぬいぐるみの頭が少し凹んでしまった。 社長は困ったように、 「こんなところよりも活躍できる場所があると思ったから……」 「おかげで、落ち着いたところの事務職として入ることができましたけれども 」 「動物園じゃなく?」 社長が言った動物園とか、暗にこの会社の今のことを指している。 「自覚あるんですね」 「現実は認めるしかないですから」 社長が苦笑いをしたので、私はあえて、今日1番大きな声で笑って見せた。
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