そんなこと言われたって。⑭ 【微妙にR18】

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そんなこと言われたって。⑭ 【微妙にR18】

   ***  和良品家で夕飯を食べるのが昨年から復活した優に甲斐甲斐しくお世話されながら、食事が済んだ頃には心がとても疲弊していた。親の前で何の羞恥プレイかと泣きたくなった。  ひと心地つくと、ようやく優が自宅に帰ったのを見計らって、シャワーを浴びるべく着替えを持って階下に降りて来て来ると、帰ったはずの優が洗面所の前にいた。  美佳は着替えをそっと背中に隠す。 「何でいるの?」  帰ったからシャワーしようと思ったのに、とんだ誤算だ。  優の手元を見れば、衣類と思われるものが握られていて、訊くだけ馬鹿だと思いつつ訊かずにいられなかった。 「三助してやろうかと」 「プロ意識ない人は三助になれません」  三助とは江戸時代中期頃から銭湯で背中を流すことを生業としていた男性被用者で、女湯にも普通に居た。ただし大勢の裸の女性客に囲まれているので、相当な忍耐力がないと従事できない仕事だ。  優には最も向かない職種だと自信をもって言える。  しかしこれで優が挫けるわけがない。ニッコリと笑って切り返してくる。 「美佳の専属だから、懇切丁寧に洗ってやるからな」 「雇ってないから」 「大丈夫。おばさん(お上)からのお達しだから」 「はあッ!?」  我が母親ながら一体何を考えているのか。  美佳は小走りで廊下を走り、扉の前で一瞬躊躇する。膝の間に着替えを挟んで扉を開けようとして、背後から伸びた手が押し開いてくれた。それが優だってことにムッとして横目に睨み、膝の着替えに手を伸ばすと今度はそれを横取りされた。 「ちょ…っ」  鼻歌を歌ってご機嫌な優がさっさとリビングに入って行くと、どうしたのと訊ねる母佳純の声が聞こえた。 (着替え盗られた~ぁ)  油断したと嘆くも、それはこの際すっぱり諦めて、先ずは “一人でお風呂” の権利をもぎ取らねば。 「優が一緒にお風呂に入るって、どーゆーこと!?」  ソファーに座る佳純と、脇に立った優が楽し気に雑談している所に怒鳴り込んだ。  佳純はきょとんと瞬きをし、 「だって一人じゃ背中洗えないでしょ」 「お母さんが洗ってくれれば済むじゃないっ」 「やあよ。忙しいもの」 「優と話してただけじゃない」 「ちっちっちっ。これからドラマが始まるの」 「娘とドラマ、天秤に掛けないでよぉ」 「別に問題ないでしょ? 美佳は優くんの所にお嫁に行くんだし」  美佳ががっくりと項垂れた。  悪気がないのは知っている。しかし。毎度思う事だけど、佳純のモラルはどうなっているのか、頭の中を見たくなる。 「お母さん。娘の貞操をなんとお考えでしょうか?」 「だって今更でしょ? ねえ」 「ねえ」  優に同意を求める親で果たしていいのだろうか? (いや。良くない)  佳純は尽々優に甘い。甘いなんて言葉じゃ生温いかもしれない。  忙しい千鶴に代わって優の世話をして来た佳純にとったら、息子も同然だ。しかも生まれてすぐ娘婿に決定ときてる。育ての親でこれなんだから、世の母親が息子が可愛いのも解ると言うもの。 (実の娘よりランク上ってのが腹立つのよね)  二人分の着替えを抱え直し、満面の笑顔で「じゃあ行こうか」と言う優を張り倒したくなる。  身体を普通に洗ってくれるだけなんて、どうしたって思えない。それだってまだ充分に恥ずかしいのに。  優に引き摺られる娘に「テーピングは任せてね~ぇ」と手を振るのは、母親として本当に失格だと思う美佳だった。  極上の笑顔で美佳の衣服を剥ぎ取って行く優を見ては、げんなりとした溜息を漏らす。  どうしてこんなにお世話熱が入っているんだろう。  夕食然り、トイレ然り。さすがにトイレは泣いて断ったけど、優は『今更でしょ』と不服そうだった。 (優が “美佳” だったことを考えたら、ホント今更なんだけどッ! あたしが “美佳” の時は勘弁して欲し~よぉ。そんなことされたら羞恥心で死ねるッ)  身悶えているうちに美佳を素っ裸にして退路を失くし、ここでもやっぱりハミングしながら自分の服を脱いでいる。 「何でそんなにご機嫌なのよ?」 「これ見よがしにイチャつけるから」 「………そですか」  既に気落ちするのも勿体ない。  肩のテーピングを剥がそうと爪でカリカリしていたら、優に手を取って止められた。美佳が首を傾げると「肌弱いんだから」と考えなしを諫められ、思わず顔を顰めてしまった美佳を洗面台の鏡越しに見てくる。 「濡らしてから剥がした方が、肌を痛めないっていつも言ってるだろ」  鳥頭、と言って思い切り溜息を吐かれた。  絆創膏ひとつ剥がすのでもすぐに真っ赤になるから、子供の頃から言われ続けているのに、毎度すっぱり忘れている美佳としては、反論の余地がない。 (…瘡蓋もついつい剥がしちゃって怒られるんだよね。けど気になると手がムズムズすると言うかなんというかさあ)  美佳の指が怪しい動きをしているのをチラリと見て、優が本気で呆れている。 「まずは濡らせ。そしたら心置きなく剥かせてやる」 「らじゃ」  嬉々として曇りガラスのドアを開け、シャワーを出している美佳の後に続く。彼女の手からシャワーヘッドを奪い取りると、子供を窘めるような目で見た。 「熱持ってるんだから一気にお湯を当てるなよ。痛んでも知らねえぞ。ほら座れ」  足でバスチェアを移動し、美佳が腰かけると頭から容赦なくお湯を掛ける。 「やっぱり俺と入って正解だったな。危なっかしい」 「そんな事ないもん」 「あるから言ってるんだろ」 「前……そんなにして言っても説得力ない」 「正常な反応だろ」  正面の鏡越しから目に入った優の屹立を責めたところで、彼がニヤリと笑えば、怖い想像が膨らむばかりだ。  優しい手付きで頭を洗って貰っているのに、本当なら極楽の筈なのに、この後に続く…かも知れない所業が脳裏を過り、、指を組んだ美佳は何事も起こらないことを祈るばかりであった。  テープを濡らしたら、心置きなく剥がして良いって言ったのに、優はまだ剥がさせてくれない。テープが勝手に解けてきているのに。  そんな不満を抱きつつ、美佳は身体を洗う優の卑猥な手付きに翻弄されていた。 「…ぁ……んっ……だ……ダメって…ふぅ……ぁっ」  洗った髪を結んだ首筋に、優の唇が這っている。 「何が? 身体洗ってるだけだろ?」  肌の上をくるくる円を描いて滑って行く。優の手の感触を覚えてしまっている身体にはそれすらも劇薬の媚薬となり、狂おしい程の甘い痺れから逃してはくれず翻弄される。  指先で弾かれる度に乳房の尖端がピクピクする。直ぐに滑らかな肌を移動してしまう優の手によって中心に熱を溜め込み、もどかしさに腰が揺れてしまう。  花芯がきゅんきゅんと切ないのに、美佳の秘所を避ける優に恨みがましく小さく唸ると、素知らぬ顔をして泡を洗い流されてしまった。  潤んだ瞳で優を振り返った時には、立ち上がって自分を洗い始めていた。  泣きそうに顔を歪め、駄々っ子の様に鼻を鳴らして優を見上げていると、「なんだよ」と意地悪な笑みを浮かべて訊いて来た。 「一か月禁止なんだろ? それに…おばさんにバレちゃうよ?」 「意地悪だ」  むくれた美佳に優が喉を鳴らして笑う。 「やっぱり解禁にする?」  脇にしゃがんで美佳の柔らかな下生えを指先がノックした。  どうしてこうも優に愛撫されると弱いのか。全てを投げ出したくなってしまう。  これまでに何回前言撤回させられてきたか。  余りにチョロ過ぎて、美佳は自分が嫌になる。  優の目がどうすると訊いていた。美佳は暫く躊躇った後、上目遣いで彼を睨んだまま「する」と呟くと、「良く出来ました」と優の指がクレバスをゆっくり滑り降りて行った。
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