その少女

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(恋情の縺れ……ねぇ) 「女っつーのは恋愛が絡むと途端に面倒になるよな」 思わず苦い顔をしてしまう。自分語りをする気はないが……今までの経験を鑑みてもあまり良い印象はない。 「秋友さん。そういうこと言うの、辞めた方が良いと思いますよ。多くの人を敵に回しますから」 ……へいへい。 ギロリと二度目の睨みを効かされれば、口を閉さざるを得ない。 閉口した蒼司を見た佐藤は. 「そうです。暫く、イイコでいてくださいね」 とにこやかな笑みを浮かべた。 ……お前は俺の母親か? 一回りも年下の佐藤に窘められる俺って……。 なんだか力が抜けてしまう。 「これは、警察の方から聞いた話なんですけれど。 理央が本当に人を殺したにしては、不審点があるらしいのです。 まず、恵ちゃんを刺したと言っているナイフ。 ──スーパーのレシートが理央の財布にあったということなんですけど、そのスーパーの防犯カメラには理央の姿が映っていなかったらしいのです」 「えぇ!? じゃあ、ナイフなんて買えないじゃないですか!」 大袈裟に大きな声で佐藤は真理に詰め寄った。 ……だからお前は近いって。 詰め寄られた真理は、 「えぇ。そうなんです。あと、近いですよ?」 と、苦笑を浮かべやたら距離の近い顔を右手で押さえていた。 「……あとは、恵ちゃんのカッターシャツのボタンなんですが、1つ無くなっていたと言われたんです。それに、ボタンには理央の指紋しか付いてなかったようで……どうしてだろうって」 押さえつけたまま話している真理には思うところがあるが……。 「たしかに妙ですね」 恵のカッターシャツなら、恵の指紋があるのが普通だ。 何か不都合なことがあり、拭ったのかもしれないが、そんな工作をするくらいなら自供する必要はないだろう。 「えぇと、真理さん。真理さんは、以上の点を含めて『理央さんは無罪だ』とお考えなんですよね?」 「もちろんです。あの子は、人を殺すような子じゃありません」 「それは分かりました。 しかし、その考えを基にすると、 『理央さんが誰かを庇うために自首をした』ということになります。理央さんが庇うような人に、心当たりはありますか?」 「……」 考えているのだろうか。30秒ほど真理は黙り込み、そして口を開いた。
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