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「秋友さん。引き受けましょうよ」
話を聞いて感化されてしまったのだろう。佐藤の目が潤を帯び、背中をバシバシと叩いてくる。痛い痛い! この馬鹿力が。
──こうなってしまうと、佐藤を抑えるのは難しい。
今までの経験が「諦めろ」と告げる。
仕方ない。ある程度聞いて、また考えることにしよう。
「森下 昭雄さんはどうですか? 関係とか」
「それが、全く分からないんです。
森下先生は、生徒指導を担当している先生で、理央のクラスの授業を受け持っているという訳ではないみたいですし」
「理央さんが指導されたということは?」
指導されて、教師を恨む。という逆恨みパターンも考え得る。そんなので殺人なんてされたら、生徒指導も堪ったもんじゃないが。
「いえ。ないと思っています。理央は真面目な子で、指導されるような行動はしないはずです。校則を5回も読んで頭に入れるような子ですから」
「……それはそれは」
たしかになさそうだ。
5回も校則を読む学生なんて、そうそういないだろう。少なくとも自分はしなかった。理央はよほど真面目……というか。ある種の潔癖染みたものを感じる。
「娘さんの写真、持ってきてたりしますか?」
「持ってきてます。コレが、そうです」
真理がテーブルに置いた一枚の写真には、満面の笑みでピースサインをしている2人のあどけない少女たちがいた。
「コッチが理央です」
背中まである黒髪を下ろしている色白な少女が理央で
「左のこの子は?」
「恵ちゃんです」
明るい茶髪を編み込み?しているお洒落な少女が被害者の遠山 恵か。
(理央の方は生徒指導と縁がなさそうだ)
この写真は制服姿で撮られたものだった。放課後にでも遊びに行ったのだろう、──高校から歩いて10分程度の商店街が背景になっている。
恵が髪の毛をアレンジしたり、腕にブレスレットを付けたりと洒落込んでいるのに対して、
理央の方は装飾品の類が一切見られない。
オシャレにはあまり興味がないのかもしれないな。
典型的な地味女、といったところだろうか。
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