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「……分かりました! その依頼、お引き受け致しましょう!」
ドンッ。と胸を叩いて、佐藤がそう宣言した。
(は?)
待て待て。俺は引き受けるつもりなんてないぞ!
何がどうなってそんな話になってたんだ!
撤回の言葉を口に出そうとした蒼司だったが。
「本当ですか!? 良かった。どこにお願いしても断られてて……藁にも縋る思いでここに来たんです。本当に、良かったぁ」
真理の嬉しそうな態度に閉口した。
(こ、断りづれぇー)
頭を抱えて唸ることしかできない蒼司に、
「秋友さん! 頑張りましょうね!」
と。したり顔の佐藤。
……どうやら佐藤は、こうなることを狙っていたらしい。
佐藤は共感性が高く、様々なモノに感情移入しやすい傾向にある。今回はそれが顕著に出てしまったようだ。
久しぶりの依頼人、ということもあるのかもしれないが……人に感情移入し過ぎるのは、佐藤の悪癖だと言わざるを得ない。
本人を抜きにしてどんどんと会話が進んでいく。
(最悪だ……)
蒼司はただただ肩を落として諦めることしかできなかった。
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