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伊織が長い脚を組み直した。
「それでボス、なんの用事?」
「いやあね、伊織さんに朔夜君。君達はめったにここに顔を出してくれないものだから、寂しいなあと思ってね」
「それだけ?」
「それだけさ」
「本当に?」
「うん。悪いかい?」
「悪いスよ」
「おやおや。朔夜君は今日も率直にものを言ってくれるね。まさに平常運転だ」
「もう二十二時を回ってるッスよ。こちとらかなり眠たいんスよ」
「早寝なんだね、君は」
「そうなんス。だから、とっとと帰してやってくださいッス」
「冷たいなあ。ねぇ、伊織さんもそうは思わないかい?」
「ただ顔を見たいだけっていうのであれば、私だって迷惑。かなりNG」
「つれないなあ」
「一つだけ、質問しても、いいっスか?」
「いいよ。なんでも答えよう」
「前から常々思ってたんスけど、単なる本庁勤めの刑事でしかなかった俺を引き抜いたのは、どうしてなんスか?」
「君のことを、僕は以前から知っていた」
「だから、それってどうしてなんスか?」
「本庁きってのトラブルメーカーだって話だったからだよ。そう聞かされたら、僕みたいなニンゲンからすると、興味を抱かざるを得ないだろう?」
「よくわからない理屈っつーか、理由ッスね」
「要するに、より面白おかしい結果をもたらしてくれるファクターとして、君のことをどうしても組織に迎え入れたかったということさ。なにをやるにあたっても大切なのは遊び心だということだよ。面倒を見なくちゃならないような部下が一人欲しかったんだ」
「内閣直属の、しかも非公開執行組織様にも遊び心なんてもんが必要なんスか?」
「僕はそう思っている。必須だとすら考えている」
「結局のところ、褒めてもらってるんスかね」
「そのつもりだよ」
「けど、俺ってあんまり上等なニンゲンじゃないッスよ」
「僕はそんな君をかわいいと思ってる」
「気色悪いス」
「まあ、そう言わないでよ」
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