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パワーウインドウをぶち破って、車内に拳が飛び込んできたのだ。助手席の男は見事かつもろにその一撃を食らう格好になった。顔面をド正面から殴られ運転席のほうへとぶっ飛んだのだ。車の窓なんてそう簡単に破壊できないだろう。だから私はびっくり仰天、目を見開くしかなかった。
割れた窓から、ぬっと手が伸びてきた。ロックが解除され、ドアが開け放たれた。運転席のほうにぐたりと体を傾けたまま気を失っている助手席の男を外へと引きずり出して、ヒトが顔を覗かせた。後部座席に顔を向けてくる。重めのマッシュにニュアンスパーマ。黒髪の男だった。
こせがれらはいっせいに男のほうを見て、私は男と目が合った。
男は「よぉ。お楽しみの最中、邪魔するぜぇ」と言い、にやりと笑った。「だだ、誰だよ、おまえ」とはこせがれのセリフ。
「強姦未遂ってとこか。現行犯だな」
「だ、だから、誰だってんだよ、おまえ」
「ガキ風情が俺様のことをおまえ呼ばわりしてんじゃねーよ」
「ぐっ……」
「後ろのドア開けろ。あんまり俺を怒らせんな」
やむなくといった感じで、こせがれが後部座席の鍵を解いた。パワースライドのドアがゆっくりと開く。男が腰を屈め、中を覗き込んできた。
「やっぱダセーよ、オメーらは。今時、レイプなんて流行らねーぞ」
「そそ、それで、誰なんだよ、おまえは」
「おまえ呼ばわりすんな。しつこいぜ」
こせがれの顔に男が右の拳をぶつけた。コツンといった感じの軽いパンチだったけれど、もらったほうは鼻血ブー。
男が顎をしゃくって、私に外に出るよう促してくる。解き放たれ、自由になった私は、口の中のハンカチを取り去って、ブラウスの前を掻き合わせながら、急いで車外へと飛び出した。
なんだかよくわかんないけど、ラッキー、なんとか助かった?
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