22人が本棚に入れています
本棚に追加
/166ページ
そう安堵しかけた矢先に、向こうから歩いてくる黒人に気づいた。うげげっと声が出そうになった。危機はまだ続くらしい。
黒人がゆっくりと近づいてきた。私を助けに来てくれたヒーローと思しき男は驚いたようで、「うおっ、デケーな」と上半身をのけ反らせた。
びっくりするのも無理はない。黒人は二メートル超の大男なのだ。男だって百八十半ばくらいはあるだろうけれど、比較すると一回り小さく見える。
男に「テメー、名前は? なんてーんだ?」と訊かれると、黒人は片言の日本語で「ボブいいますデース」と答えた。
そう。ボブだ。トレードマークは長いドレッドヘア。事務所で何度かすれ違ったことがある。そのたび、私のことを見て、白い歯を剥き出しにして、にっと笑った。その笑顔が大嫌いだ。嫌悪感を覚えるしかなかった。メチャクチャ、スケベそうに映ったから。
「見た感じ、オメーはボディガードかなんかなんだろ? なのに、今までどこほっつきあるってやがったんだよ」
「近くの居酒屋で一杯ひっかけてましたデスネー」
「不真面目な野郎だな」
「理沙ちゃんをどこに連れていく気デスカー? 連れていかれたら、ボブ、困りますデスネー」
「ほぅ。オメーも参加するつもりだったのか」
「そうデスネー。ボブ、女子高生大好きデスネー。女子高生、いろいろおいしいデスネー」
「ナカがキツいからサイコーだってんだな。この俗物野郎が。面倒だからとっとと言うぜ、ボブ。交渉するまでもねーよ。おまえは今、俺の敵になった」
「ハッハッハ。ボブを倒せるとでも思っているのデスカー?」
「倒せるか倒せないかじゃねー。やるんだよ」
「だったら、かかってこいデスネー」
「そうさせてもらうわ」
最初のコメントを投稿しよう!