1.

7/8

22人が本棚に入れています
本棚に追加
/166ページ
 男が早速、下から突き上げるような右のボディーブローをズドンッと見舞った。余裕で耐えられると考えてのことだろう。ボブは真っ向から受け止めた。だけど、そのボブの顔が見る見るうちにゆがむ。前屈みになると、両手で腹部を押さえ、醜い液体を「がはっ」と吐き出した。  男は手を緩めない。顎に右の膝蹴りを食らわせ、どっと仰向けに倒れたところに執拗なまでにストンピングを浴びせる。  そのあいだに逃げればいいのに、ワンボックスカーは止まったまま。こせがれらはご自慢のボディガードが呆気なくやられてしまった光景を見て、震え上がっているのだろう。  ボブがぴくぴくと痙攣するまでガンガンガンガン蹴り続けた男は、黒いジャケットのサイドポケットからスマホを取り出した。どこぞに連絡。話の内容からして警察だろう。居所と車種とナンバーと犯人の数を速やかに伝え、「さっさと来いよ、おまわりさん」と締め括った。
/166ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加