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2.
表通りに、俺は戻った。
ハザードをつけて路肩に停車している黄色いスイフトスポーツの助手席に乗り込む。煙草の匂い。アホみたいなパーラメントの匂い。
運転席に座っているのは浅黒い肌をした黒髪の女。漆黒のパンツスーツ姿だ。名は泉伊織という。凶器かグングニルとでも呼ぶべき恐ろしくデカいパイオツに抜群のくびれ、加えて最上級のプリケツを誇る女だが、俺は伊織に欲情したことがない。単なる仕事上の仲間であるというだけだ。
伊織が「おかえり、相棒」と口を利いた。声にまで挑発的な色気がある。言わば、究極かつ極上のセクシーボイス。
車を出しつつ、伊織は言う。
「それで? なにか収穫は?」
「なくはねーな。むしろ、あったよ」
「具体的には?」
「JKを助ける羽目になった」
「JKって?」
「JKはJKだ」
「ああ。女子高生のことか。なに? レイプされそうにでもなってた?」
「おっかねーよ。なんでそこまで勘がいいんだよ」
「だって、私は女だから」
「答えになってねーな」
「そうかな?」
「そうだよ」
「そのJKの名前は?」
「それって重要か?」
「一応、訊いてみてる」
「えーっとな……」
「がんばれ。思い出せ」
「ああ、そうだ。確か、クサナギ・リサっつったな」
「ふぅん。クサナギ、クサナギか……」
「なんだよ。なんかあんのか?」
「まあね」
「なんでもいいからとっとと送ってくれよ。今日はもう店じまいだろ?」
「そうでもない」
「ああん?」
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