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 夜の繁華街。  暗い路地裏。  わたくし、(くさ)(なぎ)()()様はピンチピンチ大ピンチ。  平たくかつ率直に表現すると、レイプされてしまいそうなのだ。  現場はワンボックスカーの後部座席。シートを後ろに倒せばベッドに早変わりという仕組みである。当然、到底、広いとは言えない。言えないけれど、天井の低ささえ気にしなければ、(じょ)()の一人くらいはじゅうぶん手籠めにすることができる。  両腕を二人の男に抱えられ、また両方の太ももをそいつらにそれぞれ押さえつけられ、まったく身動きをとることができない私。口にはハンカチを詰め込まれていて、つらいし、息苦しいし、「んー、んーっ!」と、くぐもった声を発することしかできない。実に不自由な状態だ。ゆるしがたい不快な状況であるとも言える。  私は女子高生ながらもモデル業を営んでいて、客観的に見ても結構な評判になっている。かなり人気を博していると言っていい。ある意味、カリスマ。ある意味、教祖。そんな偉く尊い私に大いなる悪戯を仕掛けているのは事務所社長の息子。このすっとこどっこいのこせがれには、以前からよくない噂があったのだ。  事務所に所属している女のコを複数人で襲い、その様子を容赦なく撮影して、「動画サイトにアップされたくなくなかったら言うこと聞けよ」なる文言を並べて繰り返し悪さをする。弱味を握って逃げられなくするという寸法だ。
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