魔球ストレート

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自慢げに投球練習をしているエースを紹介して見に行かせたことに満足そうな青木。 「随分と自信満々に話してたじゃないか。」 どこから会話が聞こえていたのか影に隠れて盗み聞きしていたのか青木の方へ近寄ってくるのは監督だ。 「監督…そりゃあ市内で一番強い野球部のエースですからね。」 「一度でも勝てば市内一を名乗れるなら他の大会で優勝した中学も一番だぞ?俺が当時この学校の生徒だった時はな、常に市内で一番だったもんだ。」 そんなことを言われても自分達は強いチームであると変わらない表情の青木。 「俺ん時のキャプテンはな、凄いバッターだったよ。どんなピッチャーだろうが必ずバットに当てていく。三振したところなんて一度だって見たことなかったな。残念なことに強豪校には行かずにマイペースで野球を楽しむような奴だったからプロには行けなかったが俺は今でも通用すると思ってる。」 「そ、そんな真剣にやってないやつがどんな球も打てるなんて…」 「とにかく常に冷静でフォームが綺麗で慌ててるとこなんか見たことなかったな。あいつと俺がコンビを組んで他校の野球部に恐れられてたのが懐かしいな!久々に連絡でもとってやるかな!ははははは!」 青木は自分の中学校が一度も全国の舞台に立っていないのを知っていた。 自慢げな監督の話を聞き、そこまでの選手がいながら当時のチームが全国に行けなかったのは監督や他のメンバーが足を引っ張っていたからだと悟る青木だった。
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