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無愛想な猫
入って、そこにある光景に思わず足が止まる。
どうやら、西川と陽樹は、二人でソファーに座り、テレビを見ながらくつろいでいた所のようだった。
が、驚くべきはそのくつろぎ方。
陽樹の足の間に西川が抱き込まれるように座っている。
西川はマグカップを手にしているが、陽樹は西川に抱きつき、首筋に顔を埋めていた。
……あれが学年の王子様かあ。
いきなり入ってきた俺たちに驚いた様子の西川。
「え、お前らどうしたんだ?」
「ごめん、悠音が暴走して、」
事情を説明しようとするが、悠音の声でかき消される。
「おい、本堂!!」
「……」
「聞いてんのか本堂!」
「……」
二度目の問いかけでようやく顔を上げてこちらを見た陽樹。
そこには、いつも優しい笑顔を浮かべた完璧王子様はなく、ただ飼い主に甘える一匹のねこがいた。
陽樹は無表情で、こっちを見ている。
いや、美形の無表情ほど怖いものはないから、いつも通りにしてほしいんだが。
「……なに?うるさい……」
それだけ言うと、陽樹はまた顔を伏せ、西川の首筋に頭をぐりぐりする。
今まで、誰もいない所で(俺はいるが、本性は知っているから関係ない)、西川に甘える陽樹は見てきた。
が、寮ではここまで甘えたモードになるとは。
目の前の男は本当に陽樹なのか、DNA検査してほしいくらいだ。
「今日の昼休み、藍矢にご飯食べさせてただろ」
「んー……?あー、あれね」
「なんでそんなことしたんだよ!」
「えー、だって藍矢が欲しそうに目をキラキラさせてたからあげよっかなって」
「お前に、藍矢に食べさせる権利はない!」
いや、普通に悠音にもそんな権利あげてないけど。
「それに、三人で食べたんだろ?西川の目の前でそんなことしたってことは、立派な浮気だろ!」
「……はぁ?」
この悠音の言い分にはカチッときたみたいで、陽樹な綺麗な顔を歪ませてこちらを睨んだ。
そして、「ごめんあきちゃん」と西川を脇に行かせて、立ち上がる。
「和食が偉そうに言えんの?今日だって、和食の我儘で藍矢を怒らせて、一日謝りもせずに放置したんだろ?そっちこそどうかと思うね。それに、僕はあきちゃん一筋だから。浮気なんて絶対しない」
西川に一途なことをしっかりと言いつつ反論する陽樹に、悠音と負けずに言い返す。
「そんな言うんだったら、俺もだし。藍矢以外ないから。今日のことだったら、藍矢は許してくれた。藍矢は凄く優しいから」
「あきちゃんも優しいけど?いつも、学校では甘えさせてくれないけど、寮でだったらどうせ二人きりだしいいよって甘やかしてくれるのに。和食はそんな貴重な時間を奪ったわけだけど、どうしてくれるわけ?」
「ふん。知るかよ。学校で甘えられないようなキャラしてんのが悪いんじゃね?」
「和食、人のこと言えんの?」
ほんとにな。
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