東国にて

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東国にて

……'' ''は、19XX年に'' ''との国交が正常化してから年々観光客数を増やしていき、現在では'' ''からの観光客数が年間1位となっていて、'' ''では、……… かつて秘境と呼ばれたその場所は、今やその栄華は見る影もなかった。確かにもう数十世紀も前に滅んでしまった国だし、交易もしてなかったから仕方ないのだけど。 女性が雑誌のページを捲ると、かつての国に建国された、比較的年数の浅い国の観光スポットが所狭しと紹介されていた。ランキング上位常連の場所は崖と崖を繋ぐつり橋。正確にはその橋から見える絶景だ。橋からは、朝陽と夕陽の両方が見えるらしく、朝に訪れて昼間は他の観光をし、夕方また戻ってきて夕陽を見てから帰る、というのが定番らしい。 (うん…?) 観光雑誌に載っていた写真にふと既視感をを覚えた。目を引いたのは山間部に群生する赤い花。引いたアングルで撮られているため何の種類かは分からないが、20世紀以上も前の情景を呼び起こすには十分だった。今となっては過去のことだと振り替えることも苦もなく出来るが、直後は悪夢に苦しめられたし現実も苦しかった。そのときの情景が巡るなど、自分も存外繊細らしい。そんな自分に苦笑した。 (久しぶりに行ってみるのも悪くないか) 女性はフットワークが軽い。 すぐに職場へ連絡し有休を5日間程申請する。彼女の職場は大きな企画が控えていない、重要なポストに現在いない、という社員には申請してすぐに有休を出してくれる。クリーンホワイトな会社なのである。 日曜日に出ていき、次の日曜日に帰国する予定だ。滞在中は現地の友達をあてにする。すぐにメッセージを送った。 【ちょっとそっち行きたいんだけど、明日から1週間くらい泊めてくれない?】 【はぁ?】 【お願いだよー、頼む】 【急に言われても………まぁいいよ、どうせ1人だし。でもうちに何もないから、いろいろ持ってきてよ】 【了解(*゚∀゚)ゞ助かるわー、観光雑誌見てたら急に行きたくなっちゃってねー。有休通ったから行くわー、お土産は持ってく】 【はいよー、気をつけて】 【(*- -)(*_ _)ペコリ】 寝泊まりする場所は確保した。飛行機のチケットも先ほど取った。持っていくものは、パスポート、お金、スマートフォン、モバイルバッテリー、愛用するアイマスクの5点だ。他の物は全て置いて行く。彼女は現地調達もまた旅の醍醐味だと考えている。 次の日、彼女は実に300年ぶりとなる祖国跡地へと飛び立った。
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