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ある国
まだ、文明のぶの字もなく、言語さえも未発達だった時代。
とある国では花言葉に気持ちを込めて、花を贈り合って意志疎通を行っていた。
感謝したいときは''ありがとう''の気持ちを込めて、「ホワイトレースフラワー」を。
どうか幸せにと願うときは''幸運を祈る''という気持ちを込めて、「ポインセチア」を。
先祖から脈々と受け継がれるこの習慣は、国に長きに渡る平穏をもたらしていた。
どこから情報が漏れてしまったのか。確かに秘境だったその場所は、突如戦場に変わった。
国民たちがお互いの幸せを無事を満ち足りた生活を願って植えた心の結晶である花たちは、無惨にも戦火に包まれる。
花たちは燃やされてしまった。
(なんで!!どうして!!!!)
(私たちが何をやった!?)
(何の権利があって私たちの愛の花を踏み荒らした!!!!!!)
残された国民たちの間には言葉を持たぬがゆえに、怒り、憎しみ、悲しみ、嘆き、複雑に絡み合って負の感情が練り上げられていく。それは、先祖が願った国の在り方からは随分とかけ離れていた。
そんな中、一人の少女が花を握りしめていた。
その花は___アカツメクサ___。
込める気持ちは、
「豊かな愛」か「絶望」か。
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