恨み

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「私はね、消えて欲しいと強く願った相手を別の世界にいる同じような存在と入れ替えることが出来るのよ」 「な、何を言ってるんだ?」 「はっきり言うわ。イメチェン病を流行らせたのは私なの」 「な、なんだと!?」 「まさか私がこんな能力に目覚めるとは思わなかったわ。すっごく便利だわ、この能力。だって気に入らない人をチェンジすることが出来るんだもの」 「……お前が、知恵を消したのか?」 「ええ、そうよ。あなたに振り向いてもらいたくてね。私はあなたの大人しくて頭が良いところが気に入ったの。 私、うるさい人とか人の悪口を言う頭の悪い人は嫌いでね。この世界のあなたはとにかくうるさかったわ。付き合ってた彼女にフラれたとかで、授業中にワーワー泣いてたのよ。 そのせいで私は授業に集中出来なくて、ムカついてあなたとチェンジしたの。さすがにすぐには能力を使わなかったわ。だって目の前でいきなり姿が変わったら非現実的すぎるじゃない? だから、誰も見ていないであろう夜中に能力を使ってあたかもイメチェンしてきたかのようにしてきたのよ。 一番最初にこのクラスの女を消した時は、まさかこんな能力が使えるなんて知らずにうっかり昼に使ってしまったけれど、周りに誰もいなかったから良かったわ」  おいおい。こいつ、一人でめっちゃ語るな。こんな喋るキャラだったっけ?   中々間に入って喋る隙が無かったが、少し間が空いたタイミングで俺は喋った。 「なあ、市川さんよぉ。俺に何か言うことは無いのか?」 「え? 私はあなたが好きで好きでたまらないの」 「ふざけるな! そんな言葉を待ってたんじゃねぇよ! 俺はお前に謝って欲しかったんだよ! 俺だけじゃねぇ! チェンジさせられた人達にもだ!」 「謝る気は無いわ。だって私をムカつかせるのが悪いんじゃないの。皆あなたのように大人しい人だったらこんなことはしないわ」 「今すぐ皆を元の世界に返せ! それと、知恵をこの世界に呼び戻せ!」 「それは無理ね。だってあの能力はランダムで人を選出するんだもの。世界線が何本存在するのか分からないから元の状態に戻るまで何回能力を使わなければならないか分からないじゃない。面倒くさいわ」 「面倒くさいか……。お前って奴はマジでクソだな!」  次の瞬間。俺は市川の顔を殴っていた。後方へと飛ばされる市川。床に激しく打ち付けられる音がした。 「何、するのよ……。まさかあなたが……そんなことをする人だと……思わなかったわ」
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