私が賢ちゃんを選んだ理由

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 私の旦那さんの賢ちゃんは、本当は親友マコちゃんの彼氏だった。     高校二年の時、賢ちゃんとマコちゃんはその頃、大ブームだったボーリング場で知り合った。早朝ボウリング。朝っぱらからボウリングなんて、いくらモーニングサービスで低料金たって、本当にみんな信じられないくらい元気で、やる気満々で。  でもマコちゃんは違う。マコちゃんの場合は、ご近所のお姉さんの"加奈子さん"に付き合わされていただけで、日曜くらいゆっくり寝ていたいのに──なんて、マコちゃんの場合は大分いやいやな感じ。    午前七時のボウリング場。  マコちゃんは加奈子さんに背中を押されてレーンに向かってよたよたと、ピカピカに磨かれたアプローチを助走開始。加奈子さんの教え通りに右足からファールラインまで四歩で進み、小柄なマコちゃんには重たい八ポンドのボールをエイヤと投げる。  ゴットン。  ゴロゴロゴロ。  マコちゃんのオレンジ色のボールは、途中で止まりそうなくらいゆっくりレーンを転がって、三角形のトンガリの一番ピンに向かって真っ直ぐ行くと思いきや、急にヘソを曲げた三歳児みたいに、左の溝に進路を変えて──  ガタッ。 「だからぁーマコちゃん、ボールを離す時にぃー、ほら、手首きゅって捻っちゃってるから、ねっ、だからギューって曲がっちゃうの。こう、こう、真っすぐ腕をシューっと伸ばして」──なんて、加奈子さんのジェスチャー入りの指導が飛ぶ。
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