君はモンスター

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「サッパリしました~!!」  ピンク色に白い雲模様のワンピースパジャマに着替え、濡れた髪をタオルドライしながら現れた日菜は。  冷蔵庫からサワーを二本持ってきて一本を俺に手渡す。 「はい、洸ちゃん、どうぞ!」 「……、オマエな、何か言うことないわけ?」 「あ、洸ちゃんはビールの方が良かったっけ?」 「ちげえっ!! そういうことじゃなく!」 「冷蔵庫勝手に開けたこと? さっきも開けちゃったけれど? あ、そっか、これ洸ちゃんのだもんね、いただきます、だ!!」  そうだ、そうだ、とプシュッとサワー缶開けて、いただきます、と流し込んでいる。  ……そうでした、宇宙人でした、モンスターでした、何を言っても動じないですよね、はい。  プハァッとおっさんのような、止めなさい、まだ直ってなかったのか?! 「で? またなの?」 「また?」 「誤魔化すな! 何でまたんだよ」 「またって言わないでよ~!! それに出されたって、何? 捨てられたみたいに言わないで!! 今回は私がんだからっ!!」  涙目で大きなため息つきながら一瞬だけ俺の情けを乞うた後でのサワーグビグビプハァには態度が伴わないから絶対に同情できない。  日菜から出て来たなんて、嘘に決まってる。  どうせ追い出されたんだ、! 「どうせいつものアレだろ? 彼氏に浮気されたんだろ?」  うっと言ったまんま黙りこくってオレの顔を恨みがましく見上げる日菜。  ほらな、図星だ図星! 「……わかってんなら聞かないでよ」  ううううう、と泣き始めた。  数時間前のデジャヴに俺のため息が止まらなくなりそうだ。  およそ5時間ほど前行きつけのBARのマスターから電話がかかってきた。  マスターから? 何で?  時計の針は21時になる辺り。  何だろ、ザワザワする、この電話出たくない。  多分、ダメなやつ、とわかっているのに取ってしまうのは俺の悪い癖。  勘は正しかった。 『洸太くん、どうしよ、日菜ちゃんがまた……』  また? いやオレもう関係ないですから、すみません、と電話を切ってから20分後。  何故か全力ダッシュ汗だくでBARの扉を開けちゃってる俺。  そこで見たのは、カウンターにだらしなく突っ伏してる日菜とその隣を陣取って彼女の肩を抱くチャラ男。  ああ、ほらもう早速つけ入れられちゃってんじゃん!!   「あのさ、人の彼女に何してんの?」  声をかけた瞬間ビクッと日菜から手を離しバツが悪そうに帰っていった。  酔いつぶれた日菜の足元には大きなトランクが1つ。  見慣れた光景だ。 「ごめんね、洸太くん。洸太くんの連絡先しかわかんなくて」  マスターが知っている日菜の知り合いと言えば俺だけだろうし。  いいっすよ、と苦笑したけれど、さてどうしようか。  俺が迷ったところで、どうせまた同じことになりそうではある。 「日菜、起きろ」  酔っぱらっていても聞こえているのか、やーだー、と目を瞑り。  しかめた顔を見れば歯を食いしばり泣いている。  しかも泣きすぎてテーブルに水溜まり、漫画でもこんな泣かねえわ!! 「マスター、お幾らですか?」 「ああ、いいよ、洸太くんから貰うのは」 「いいです、いいです、立て替えるだけだし。後でコイツから貰うから」  酔いつぶれた日菜を見て苦笑していたマスターが。  そう? 悪いね、洸太くんと言いながら出してきた請求書の金額に一瞬うっと息が詰まった、何飲んだらこうなんのよ?  どんだけ飲んだらこうなんのよ?!  カード持ってきてて良かった、と支払いを済ませて。  左手でトランクを持ち右手で日菜を脇に抱え引き摺るように歩き出す、クソ重い、全体重預けてくるなっ!!  すれ違う人の視線も痛い、異様な光景だろう、引き摺られて泣き叫ぶ女。  ……俺は何もしてないんで、通報だけは止めてね、と祈りながら。 「日菜、マジでちょっとは自分で歩いてって」 「嫌だようう、りゅうくううん!!」 「りゅうくんじゃねえし、りゅうくんって呼ぶな!!」  家までの道のりをずっと泣き叫んでいた日菜は。  今夜この界隈で一番みすぼらしかったかもしれない。  この光景を見た人はきっと明日誰かに話すんだろうな。
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