菖蒲

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あたしの手を掴んだその手が微かに震えている気がして、どきりとした。 でも、振り返ってはいけない気がして、前を向いたまま続きの言葉を待った。 そのまましばらく無言の時間が流れた。 「・・・また・・・来て、くれるか・・・?」 弱々しく、寂しげに、不安げに紡がれたその言葉が愛おしくて愛おしくてたまらなかった。 だから、くるりと彼の方を振り向いて、にっこり笑ってこう言った。 「もちろん!」
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