死神から離れるために

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「えっ! ……そうですか……。分かりました……。すぐに向かいます」  初夏の週末の朝、休日ということで、くつろいでいた戸倉(とくら)康志は、思いも寄らない電話を受けた。  康志(やすし)は今年、東京斗帝大学を卒業し、新宿区にある東京ITセンターに勤めていた。  電話の相手は、まもなく同棲(どうせい)する予定だった恋人の亮子(りょうこ)の母だった。  が、その内容は……  昨夜、亮子が、同棲する予定だった高層マンションの屋上から飛び下りた……という訃報だったのだ。  残念ながら、亮子は即死だった。  遺書は無かったが、自殺の可能性が大きかった。  康志には動機が無く、その時間帯は、同僚数人と残業していて、それがアリバイだった。  康志は、急いで着替えながら、 「これで二人目じゃないか……。いったいどういう事なんだ?」  前回の亜子(あこ)の時は、お互い大学生だったが、どうしても一緒に住みたいという彼女の要望から同棲する気になり……実行しようとした矢先だった。  康志はタクシーで、都営葬祭センターに向かいながら、考えていた。 (僕の人生は、誰かに(のろ)われているのかな……?)  しかし、そんな人物の心当たりも、まったく浮かばなかった。  浮かばないまま……葬祭センターが見えてきた。  康志は車内から、その光景を(うつ)ろに見ながら、 (あーあ……。いずれはここで……挙式しようと想っていたのにな……)
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