死神から離れるために

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 タクシーが都営葬祭センターに着き、康志が入って行くと、ロビーで待っていた数人の同僚が、 「あい大丈夫か?」 「気落ちするなよ」 「(つら)いな……」  といった言葉をかけてくれた。  が、亮子の両親が待つ部屋に向う、康志の耳には入らなかった。  前回の亜子の時も遺書が無かったので、彼女の両親や友人たちも、異口同音で、 「なんで死んだのかな……?」  彼女は実に明るい、一歳下の後輩だった。だから彼女の突然の自殺に、周囲の誰もが愕然(がくぜん)としたものだ。  そんな亜子の謎の死から二年が経ち、大学四年になった康志の心も平穏になった頃、今回の亮子と知り合ったのだった。  卒業後は、現在の職場への採用も内定していたので、思い切って、愛する亮子と新しい人生を歩もうと同棲することにした。  そんな矢先、今回の事件は起きてしまった。  今回も亮子の遺書が無いため、真相は闇の中となり……彼女の両親も掛ける言葉に困惑していた。  ロビーに戻った康志は、椅子に座ると頭を抱えてしまった。
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