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「ユキちゃん、タイのグリーンカレーってね」
ぐちゃぐちゃのカレーをスプーンですくって口に入れながらケンジさんが話し始めた。
「正確には『ゲーン』って呼ばれる色んなスープの中の一つで、外国人向けにカレーって呼んでるだけで本当はカレーじゃないんだよ。『ゲーン』だよ、『ゲーリ』じゃないからね。カレーだけに『うんちく』が出ちゃったよ。あっはっは」
最低だわ……
「あれ? 笑わないね。このネタ、いつも大ウケなんだけど……」
男友達ならそうでしょうね! 私は女の子なのよ! それに私が作ったカレーを前にして言うこと?
ウィキペディアに下品のコンボ…… ひどい気分。
変な空気感のまま、お互いカレーを食べ終わった。
「美味しかった」も「ありがとう」もないんだ。ケンジさんが独身の理由が分かってきた気がする。
だんだん腹が立ってきた。……でも見た目はすごくタイプなのよね。何なのこの気持ち!
私達が座っているすぐ後ろにはベッドがあり、ベッドの側面にクッションを挟んでもたれかかり膨れたお腹を休めていた。静寂の時間、ちらりとケンジさんの顔を見る。
ああ、やっぱりカッコイイ……
きっとケンジさんは女の人をよく知らないんだわ。逆に考えると「遊んでない」ってことよ。そうね、ケンジさんは純粋なだけ。世に言う、少年の心を持った男。そうだわ、きっとそう! わたし、彼がイケメンだから無理矢理そう思い込もうとしてる? ちがうわ、ちがうったら!
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