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午後五時半。
「部屋の掃除、OK。お花も飾った、OK」
一人暮らしの小さなワンルームの部屋を見回して、指差し確認しながらつぶやく。
今度は姿見の鏡の前に立ち、チェックする。
「髪型、OK。ついでに下着も……(ちらっ)OKっと。あとはカレーを作るだけね」
冷蔵庫から一通りの食材を取り出す。まずはたまねぎの皮から剥いていきましょ。
男が彼女に作って欲しい料理ナンバー1、カレーライス。
もちろん夏野菜カレーなんて洒落たカレーはNG。男が求めるのは、子供のころ母親に作ってもらったあのカレー、給食で食べたあのカレー、キャンプの飯盒炊飯で作ったあのカレーなのよ。
お肉にじゃがいも、人参とたまねぎに市販のルーを使ったオーソドックスなカレーが今日の正解なの。
そう、今日は彼が私の部屋に来る日。
でもね、彼と言っても付き合ってるわけじゃないの。ケンジさんとは三日前の合コンで知り合ったばかりで今日が初デート。
初デートでいきなり部屋に招くの? って思うかもしれないけど、十代、二十代のころの恋愛と違って私はもう33だし、ケンジさんも40だから……話は早い方がいいの。それに何と言ってもケンジさんは185㎝の長身、細マッチョで顔もドストライクときたもんだから、私としては今すぐにでもそういう関係になってもいいって思ってる。あんなにイケメンなのに、どうしてまだ独身なんだろう? 私と巡り合うのを待ってた? なんてね。
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