アホエロBLの世界に転生したノンケは7Pを回避したい

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アホエロBLの世界に転生したノンケは7Pを回避したい

気がつくと、俺は学校の机に突っ伏していた。 ……ここ、どこだ? 授業はすでに終わったのか、教室にいる生徒の姿はまばらだ。 席のすぐ横に面した窓から、気持ちいい風が入ってくる。 外は快晴で、日差しが暑いくらいだった。 「あれ、俺確か最終面接に行って……お祈りメールもらって……どうなったんだ?」 学校……俺はなぜ、学校にいるのだろうか? というか、この制服、どこかで見たことがーー。 「うっ……」 ズキズキと頭に響く痛みと共に、脳内に去来してくる記憶。 「そうだ、俺は就活で全落ちして……」 俺、仁和侑紀は就活で大失敗して、春からニートが確定。失意のまま、フラフラと歩いていた時に車にはねられてしまったのだ。 「そして、この制服……」 この、現実世界では絶対にあり得ないような奇抜なブレザーはーー 「俺の妹が持っていたBL漫画のキャラが着てたヤツ……!!!」 妹とは本棚を共有していたので、以前ちらっと表紙だけ見たことがあるのだ。……流石に内容までは知らないが。 つまり俺は、内容の一切分からないBL漫画の世界に転生してしまったということか。 俺は頭を抱えた。 ちなみに、俺は今まで女性しか好きになったことがない。どうすればいい……? ……とりあえず、このBL漫画はシリアスなのか、ギャグなのか、最低限の情報を知る必要がある。 なにせ、ヤクザものとかダークファンタジーとかだったら、貞操も命も危ないからな。 俺は一番近くの席にいた人間に話しかけた。 「なあ、ちょっといい?」 「あ?」 何やら聞き覚えのある、不機嫌そうな声。 振り返った顔を見た俺は、固まってしまった。 「え……?お前……」 「は……バカ仁和!?」 最悪だ。 まさか俺の天敵、宮下湊までこの世界にいるなんて。 「み、宮下……なんで、この世界にいるんだ?」 「知らねえよ。就活をしてたはずなんだけどな」 宮下とは、高校と大学が同じだったーーとは言っても、決して仲がいいわけではない。 なぜかは分からないが、宮下は会うたびに俺のことを「バカ仁和」と呼んでくる、頭のおかしいヤツなのだ。 そもそも、ヤンキー気味なコイツと、そこそこ真面目な俺は気が合わない。おかげで、俺と彼の仲は最悪だった。 死因を言いたくないのか、本当に知らないのかは分からないが、宮下もストレスか何かで不慮の死を遂げてしまったのだろうか。 それで、二人ともBL漫画の世界に転生してしまったと……。 「……つーか、この世界って何?」 「……BL漫画の世界」 「意味わかんねー」 宮下が肩をすくめる。 俺は彼の方を見ずに、小声で呟いた。 「ただでさえ憂鬱だったのに、宮下がいるなんて最悪だわ」 「あ? そのセリフ、そのままバカ仁和に返してやるよ」 そう言って、俺の顔をキッと睨む宮下。 俺は再び頭を抱えて机に突っ伏した。 俺の絶望を知ってか知らずか、宮下が窓の外を指差して急に大きな声を上げる。   「おい、校門見てみろよ」 「え?」 グラウンドの先に見えるそこには、 『私立第 穴 高校』 と書いてあったのだった。 「な、なんで穴……?」 身を乗り出して、窓から校庭を見下ろす。よくよく見れば、全裸でランニングする生徒の姿があった。 「は……!?!?」 「ヤバい、教室になんか変なヤツらが来る! 隠れろ!!」 「痛っ……! な、なんなの!?」 宮下に半ば押し込まれるような形で、二人で教室の隅の用具入れに飛び込む。 用具入れは狭すぎて、お互いに肘やら足やらで半分殴り合うような形になってしまった。 「ねえ、宮下、俺の足踏んでるんだけど」 「喋るな。アイツらに聞こえる」 用具入れに空いた隙間から、教室内の様子が見える。 ちょうど、体育着を着た五人の男子生徒が入ってくるところだった。 『もうすぐ、体育大会じゃん?それまでに、騎馬戦の練習しないと……❤︎』 教卓の上で、端正な顔立ちをした一人の男子が、筋肉質な別の男子の腰に跨る。 『あー!もうおっきくしてるなんて、ヘンタイだなぁ。  ほら、もう挿れる準備はできてるから……早く、俺が死んじゃうくらいジュポジュポして?』 「えっ……めっちゃ唐突にヤるじゃん」 この世界に来てわずか1分で始まったエッチシーンに、動揺が隠せない。 『んっ……あっ……めっちゃ、いい……!』 自ら男子生徒のモノを腰に沈めていく少年。腰を仰け反らせ、顔を真っ赤にしながら、たまらないといった表情でどんどん飲み込んでいく。 『フフ……全部入っちゃったぁ……❤︎』 そのまま口に別の生徒のモノを咥えて、両手にも他人のモノを握っている。 教室に響く、淫靡な喘ぎ声といやらしい効果音。 気まずい思いをしながらひたすら固まっている、俺たち二人。 盛っているアイツらに聞こえないような、小声で話す。 「な、なにあれ……?5P……!?!?  こんな卑猥な本、うちの妹読んでたの!?」 「まあ、絵で見るのと実際に見てるのじゃ随分違うんじゃね……」 少年は、頬を紅潮させ、涙や涎などあらゆる体液でぐしょぐしょになりながら、ビクビクと身体を痙攣させた。 『だ、ダメ!あっ、出ちゃうぅ……!  ……に、二回戦……しよ?』 「やばい、宮下。俺、この漫画のタイトル思い出しちゃった……」 「な、なんだよ。言えよ」 「『淫乱学級〜Hしなきゃ卒業できません!〜』だ」 「なーー!?」 動揺した宮下が、つい身体を起こす。 そのままバランスを崩した俺らは、思いっきり音を立てて掃除用具入れから出てしまった。 『あ……見てたの? 一緒に騎馬戦の練習しようよ❤︎』 「お、お前のせいだ……!」 「は? と、とにかく逃げんぞ!!!!!」 宮下に腕を引っ張られて、そのまま一緒に全速力で走り出す。 「そ、そうだ思い出した! 第穴高校の由来!!」 裏表紙に書いてあったあらすじを口に出す。 「元々は第六高校だったが、新しい校長の方針でエッチを主軸に授業を行うことになったため……だ! 前立腺を刺激することにより、勉強効率が3000倍になることが研究によって明らかになったらしい! 対◯忍かよ!」 恐ろしい学校だ。だが、アホエロBL世界において、常識は通用しない。 「ってことは授業があるたびにエッチするってことかよ!? そんな学校嫌すぎるだろ!」 AVやエッチな漫画でよくある設定だ。 「しかも、Hしなきゃ卒業はできない……クソ……!」 だが俺はノンケである以上、男性とエッチするつもりはない。 走りながら、必死に頭を働かせる。 「あっ! 俺いいこと思いついた!」 「なんだよ!」 「BLの世界って大体男しか恋愛しないでしょ? この学校から逃亡してガチ女装すれば、貞操の危機は免れるはず!」 「確かに、じゃあとりあえずこの学校から出ねえと……!」 「は、早くっ! 校門へ急ぐぞ!」 胸が高まる。これで俺に平穏な日々が訪れる。 アホエロBLの世界といえども、高校生に転生できたんだ。 これからこの世界で人生をやり直してやる! 期待と共に、校庭を走り抜け、校門に駆け寄った俺たち。 ……しかし。 「なっ………!」 校門の前に張り巡らされていたのは、畑や牧場にもあるような、刺々しい電気柵だった。 こんなの、登って行けるわけがない。 「俺たち害獣かなにかかよ……! ざけんな!!」 「くっ……アホエロBLはエッチさえさせられればなんでもアリ感があるからな……」 絶望感とともにその場にへたり込む。 そんな俺たちに向かって、全力で走ってくる全裸ランニング集団。 「ま、まずい! 校庭も危険だ!!」 逃げようとするも、疲労感で腰が立たない。 『あー! 開発しがいのありそうなお兄さん二人はっけーん! 一緒に楽しい運動して汗水ザーメン流さない?』 ランニング集団の一人に腕を掴まれる。 汗ばんで紅潮した頬に、潤んだ瞳。 ……ヤバい、そんなそそられる顔で見つめられてしまったら……! 「お、俺はもうダメかもしれない……色んな意味で……」 「は!?」 「俺はいいから! 宮下逃げて……!」 「ざけんなよ! 見捨てられるわけないだろ!」 俺をキッと見つめる宮下の瞳と目が合う。 そのまま、俺の首元を掴むと、俺の唇に唇を重ねた。 そして、俺の肩に腕を回す。 「ふぁ!?」 「よく聞け、ヘンタイ野郎。コイツは俺のだから手出すな! 乱交には興味ねーから!」 『あちゃー、相手がいるならしょうがないか……』 俺から手を離すエロい生徒。 宮下は彼を冷たい視線で一瞥すると、俺の腕をグイッと掴んで、無理やり立たせる。……見捨てないあたり、コイツも意外と優しいのかもしれない。 そのまま二人で、とにかく人気の無さそうな場所を目指して走る。 「あ、ありがと……!」 「この世界でも、NTRは敬遠されると思ってあー言ってみたんだけど……あながち間違ってなかったみてえだな」 全力で走りながら、目の前の宮下に向かって話しかける。 「……ね、ねえ! 宮下ってさ!」 「あ?」 「ノンケ?」 「……そうだけど」 センシティブな問題をこんなところで聞くのは申し訳ないが、もしかしたら宮下も実はこの世界の住民なのかもしれないと思ったのだ。 「良かった! じゃあ二人で行動できる」 「何言ってんの? 俺がゲイだったとしても、二人きりのときに襲ったりなんかするわけねえっての」 「た、確かに……ごめん」 「バカ仁和。とにかく、どっかに行くぞ」 10分ほど校舎を走り回って、誰もいない古い倉庫を発見した俺らは、転がり込むようにそこに入った。 重い器具をドアに立て掛けておけば、外から誰かが入ることもできないだろう。 「はあっ……はあっ……! こ、これからどうする……?」 「と、とりあえず、しばらく休みてー……」 その場に仰向けで倒れ込む宮下。 そのまま、目を閉じて眠り込んでしまった。 ……ずっと走りっぱなしだったもんな。 汗で顔にはりついてしまっている前髪を払ってやる。 いつも目つきが悪いヤツだが、寝顔は意外と安らかだ。 腕を引っ張ってくれた宮下がいなければ、今頃俺の貞操は他人に奪われていたに違いない。 大嫌いだったとはいえ、宮下の存在に安心感を感じはじめているのは事実だった。 ……その時。 「え……?」 目の前で倒れ込む宮下の姿に感じる、強烈なデジャヴ。 俺、この姿の宮下をどこかで……。 また頭にズキズキと痛みが走る。 『仁和ーーーー!』 確か、現実世界で……なんだっけ……。 記憶にモヤがかかってしまったかのように、思い出すことができない。 それでも、目の前で宮下が倒れている姿を見たことがあるのだ。 「ん……」 俺の動揺などいざ知らず、彼はぐっすりと眠り込んでいる。 ……まあ、そんなに重要なことでもないか。 疲れているのを起こしても申し訳ないからな。 また起きた時に聞いてみればいいだろう。 俺は倉庫の床に寝転がって、目を閉じた。 意識はすぐに底へと落ちていった。 ****** あたりを包む静寂。 薄目を開けると、眠った時に見た天井がある。 俺は、横で寝ている宮下に話しかけようとして、寝返りを打った。 「宮下ーー」 ……そこに、彼はいなかった。 「な……!?」 倉庫の入り口を見ると、重い器具を掛けておいたはずのドアが開いている。 「み、宮下……? クソっ、油断した!!」 俺は考えるよりも早くドアの向こう側へ飛び出した。 すでに外はだいぶ日が落ちて、校舎にいる生徒の姿はまばらだ。 「アイツ、どこ行ったんだ……!?」 そもそも、彼は自分の意志で外に出てしまったのだろうか?  宮下なら俺を捨てて逃げる……気がしなくもない。いやでも、それならさっき助けてはくれなかったか。 何か手がかりはないだろうか。 「ん……?」 数メートル先にライトに照らされ、光る何かがあった。 「なんだあれ……?」 駆け寄り、確かめる。 「こ、これは!」 直径3cmほどの光る粘度のある液体。 見まごうことなきローションだ。 「よく見たら、一定間隔で落ちてる……」 淫乱な生徒用のゴキホイ的な罠か? それとも、宮下が残した手がかりなのか? 「一か八か……行ってみるか」 ローションを辿ると、古びた建物に辿り着いた。あたりに人影はない。 「旧校舎か……? ベタだな」 アホエロBLなら、絶対この中でヤバいことが行われているはずだ。 スマホのライトを照らしながら、用心して中に入ると、ローションが途絶えていた。 「クソ、これじゃ分からない……」 一旦出直すべきか……と思っていると、何やらかすかにいい匂いがあたりを漂っていることに気づく。 「この匂い……なんか、ヤバい」 酩酊状態になったときのように、頭がクラクラとしはじめる。嗅いでいるだけで理性を失いそうな、危険な香りだ。 もしかして薬物か……? ビン!! 「え!?」 腰に違和感を感じて下を向くと、俺のナニがものすごく立派になっていた。 「に、匂いを嗅いだだけなのに……!」 しかし、なにか違和感を感じる。 「いつもと違って右側に倒れてる…!??」 俺のポジションは左なのに……! もしかして……宮下の位置を表しているのか!? 恐るべし、アホエロBL世界。 「待ってろ宮下!!!」 俺はポジションが指す方向へ走り出した。 ****** 走り続けて数分、俺のアレが鎮まったころ。 俺は旧校舎の体育館にたどり着いた。 「こ、ここにいるのか……?」 重いドアをゆっくりと開く。 「宮下! いるか?」 「仁和!? 来るな!!」 宮下の叫びとともに、体育館の明かりがパッとついた。 そこにいたのは……。 「なーーー!?」 亀甲縛りのままステージ上の椅子に縛り付けられた宮下の姿だった。 筋肉質な身体を縄が締め付け、その引き締まったフォルムを際立たせている。 「クソッ! アホエロBLでも、緊縛は登場するのか……! でも俺、解き方が分からないよ!!」 「ざけんな!! バカ仁和、ジロジロ見たら殺すからな!!」 心底不服そうに、顔を歪める宮下。 「と、とにかくそこでじっとしてて!」 俺が罠に警戒しながら、ステージに駆け寄ろうとした瞬間。 『待て!!』 コツ、コツ、コツ。 靴の音鳴りとともに、何者かがステージの傍から登場した。 高そうなスーツに広い肩幅、そして長い顎。 切れ長な瞳は、見つめられただけでたじろいでしまいそうだ。 「だ、誰だ!?」 『私はこの学校の理事長、十六夜ゼウスだ』 「ひ、ひどい名前……」 一昔前の耽美系BLにいそうな名前だ……知らんけど。 「ゼウス! 宮下に何やってるんだよ!」 『フッ……理事長権限というものだ。  私には、将来有望な生徒を直々に特別教育する権利が認められている』 「クソ、都合の良い設定にしやがって……!」 本当に、うちの妹はどんな漫画を読んでいたんだ……!? こんなことなら、一回読んでおけばよかった。 「つーか、なんで宮下だけ誘拐したんだよ?」 『ヤンキーは受けでも攻めでも美味しいからな。キミみたいな優等生ノンケは、属性として少し弱い』 「は……? ふざけんなよ! 俺だって受けでも攻めでも美味しいわ!!」 「そういう問題じゃねえだろ!! 仁和、挑発に乗るんじゃねえよ」 『……よろしい』 ゼウスは電動のバイブとローターを懐から取り出すと、ブインブインと鳴らした。 その数、10本。 『今からお前たちに見せてやろう! ヤンキーメス堕ちの真髄を!!』 「うっ……近づくな! 失せろよ!!」 『そう、悪態をつけばつくほどメス堕ちのギャップが激しくなる……! とてつもない素質を感じるぞ!』 ゼウスが、あの不思議な匂いのするローションをバイブにトロトロとかける。 ヤバい、このままでは宮下がゼウスに開発されてしまう。 「だ、大丈夫! お前がメス堕ちしても、俺との友情は変わらないから!!」 「その前に助けろっての!!」 俺は頭を抱えた。 何か、ないのか……? ゼウスのテクとアホエロBLのトンデモ設定に打ち勝つ方法は……。 宮下をバイブから救う方法はないのか……? 「アホエロ」と書いておけば、どんな設定でも許されそうな現実世界が恨めしい。 ゼウスがバイブを今にも宮下にあてがおうとした、その瞬間。 「宮下の身体に……突っ込まれる……バイブ……。  宮下に、突っ込む………まさか!?」 俺の頭の中に、ずっとかかっていたモヤが取れた。 はっきりと、以前の記憶が蘇ってくる。 「思い出した!!!」 『は……? なんだ、いきなり』 イライラしたように、眉毛をクイっと上げるゼウス。 俺は、できる限りの力を使って宮下に向かって叫んだ。 「宮下! お前、まさか俺を助けるために……」 宮下の瞳が、わずかに驚きに見開かれる。 「……何言ってんだよ」 「だ、だから! 宮下、俺が車に轢かれそうになったとき、俺を助けようとしてトラックに突っ込んだのか……!?」 死ぬ前に見た、倒れたまま動かない宮下の姿。 あのとき、なぜか彼が目の前にいるのか分からなかったが、彼は俺を庇おうとしたのだ。 『せっかくこれからエッチシーンというときに……その話を、今すぐやめろ! エロの妨害は許さん!!』 ゼウスの肩とバイブが震えている。 だが、今はゼウスの話を聞いている場合ではない。 「な、なんでそんなことしたんだよ! お前が死ぬ必要なんてなかったのに」 宮下は顔を歪ませたまま、目を伏せた。 「そ、そんなの……。  お前を死なせたくなかったからに決まってんだろ!」 『湿っぽい話をメス堕ち前にするな! あとでいいだろ!』 頭を抱えてもがき苦しむゼウス。 いつのまにか、彼はバイブのスイッチをオフにしていた。 「な、なんで……」 『死ネタを持ち込むな!!! 地雷なんだ!!!』 「だ、だって俺はバカ仁和が好きだから! あの日、偶然見かけた時、お前は車の前で……助けたかったんだよ……!」 「み、宮下が俺のこと……?」 「……そうだよ」 『アホエロBLの三大禁止事項は死・マジレス・エロ妨害だって知らんのか……!?』 俺は宮下に駆け寄る。 ゼウスはその場にローターを投げつけた。 『せっかく、私が開発してやろうと思ったのに……! お前らにアホエロの素質はゼロ! 二人で勝手にやってろ!』 勝手に誘拐して勝手に萎えたゼウスが、宮下の拘束を解く。 そしてローションを袂にしまうと、大股で歩いて出て行ってしまった。 「み、宮下!! 良かった!!」 自然と涙が溢れてくる。そのまま俺は、全裸の宮下を抱きしめた。 「あの緊縛姿見てたら、『絶対媚薬+指2本で前立腺開発と乳首攻めからのメス堕ちは避けらんないわ』って思ってたけど……そんなことなかったな」 「に、仁和、なんでそんなにBLの受け開発について詳しいんだよ……!」 良かった。宮下は元気そうだ。 俺は宮下の瞳を見つめると、口調を真面目なトーンに戻した。 「それよりさっきの話……。  お前が助けようとしてくれてたこと、ずっと気づけなくてごめん。あと、ありがとう。本当に」 「……別に。結局助けられなかったし……。  挙句、こんな世界に転生させたなんてアホみたいじゃん」 「そんなことないよ。この世界に一緒に来なきゃ、お前のこと、絶対イヤなヤツだって勘違いしたままだったし。来た甲斐あった」 それを聞いた宮下は、少しだけ微笑みを口角に浮かべると、すぐ照れくさそうにそっぽを向いた。 「さっき俺が言ったこと、忘れろよ。  ……ノンケのお前には関係ないだろ」 少し伏せたまつ毛が彼の瞳に影を落とす。 ……宮下って、案外奥ゆかしい性格なんだな。 いつのまにか、俺は宮下が愛おしくなっていた。 「まあね。でも、見た目とか性別とか別にして、宮下のこと、好きだよ」 「なっーー!?  ……冗談だったら、殴るからな」 「冗談じゃないって。宮下のこと、大切にしたい」 「勝手に言ってろ……」 そっぽを向いたまま、胸を小突いてくる宮下。 ……普通に、可愛い。 気がつけば、俺は宮下にキスしていた。 「んっ………!?」 「ヤバい、お前めっちゃ可愛いんだけど」 「は……!? 調子乗るなよ」 舌打ちした宮下が、俺の腰元に顔を落とす。 そして、ズボンのジッパーに手をかけた。 「えっ、ちょっ!? ここでやんの!? この世界に染まりすぎじゃ……」 「旧校舎だし、どうせ誰も来ねえだろ。  ふざけたこと言えなくなるようにしてやる……って、お前も興奮してるんじゃん?」 彼は俺の下着の上から膨らみを軽くなぞる。そして、優越感を滲ませた笑みを唇に浮かべると、そのまま下着を引きずり下ろした。 キスをするように、俺のモノに唇を落とす。 「ま、待って……」 「待たない……んっ……ぢゅるっ……」 全裸で四つん這いの姿勢のまま、胸を上下させつつ、俺のを咥える宮下。 火照る頬に、色んな汁で濡らした口。 ……ヤバい。めっちゃエロい。 「ぢゅっ……んむぅ……」 「み、宮下!」 「は……うわっ!?」 宮下の口を俺のモノから離させると、彼の身体を押し倒して、その上に覆いかぶさる。 「ち、超余裕ねえじゃん」 「……どうしよう、お前の乳首すら可愛い」 「ハハ、バーカ」 ぷっくりと膨らんでいるそれを、舌で舐める。 宮下は赤らんだ顔を耳で隠しながら、身体を震わせた。 「んんっ、あっ……」 「宮下、耳まで赤くなってる」 「うるせー……」 宮下の耳を軽く噛みながら、彼の乳首とナニを愛撫すると、彼は首を反らせて息を漏らした。 その表情に、ものすごくそそられる。 「も、もう俺、我慢できないかも……」 「童貞のわりに、よく頑張ったじゃん」 宮下の唇が煽るような笑みを形作る。 そのまま、下腹部にスッと手を伸ばした。 「なに躊躇してるんだよ。さっさとブチ込めよ……筆下ろししてやるよ」 俺はゴクリと唾を飲み込んだ。 「……最高じゃん」 向かい合って、宮下のおでこに軽く唇を落とす。 指でゆっくり慣らしてから、俺のモノを宮下のナカへ沈めていった。 「いっ……!」 「だ、大丈夫か?」 「全然、平気だし」 強気だが、その瞳には涙が浮かんでいる。 いかにも経験者風な雰囲気を出しているが、勝気な宮下のことだから、後ろを使うのは実はこれが初めてに違いない。 「ごめん……優しくするから」 キスをしながら、腰を静かに落とす。 宮下の緊張も、少しずつ解けてきたようだった。 「くっ……マジで、宮下のナカ気持ちいい……っ!」 身体を突き抜けていく、電撃のような快感。 思いきり絞り取るようなキツさに、背筋がゾクゾクする。 そのまま、奥へと突き上げた。 「あっ……!?」 宮下がビクッと身体を震わせ、俺の腕を掴む。 「や、やめ……ゴリゴリ、奥に当たって……んぐっ……」 反射的に腰を引こうとする宮下を両手で押さえ、逆に打ち付ける。 「ク、クソ……あっ……んっ……」 あてどなく床をさまよう彼の両手を掴んで、俺の両手と繋ぐ。 「や、ヤバい……止まらない……!」 「かはっ……!!! んあっ……に、仁和、まっ……」 滑らかに動くようになった彼のナカへ、音がするほど激しく突き上げる。 「も、もうイッ……死ぬ……お腹の中がギュウギュウしてる……」 涙を浮かべて、涎を垂らしながら、己のお腹に白液をぶちまける宮下。 力なく床に投げられた腕は、ビクビクと痙攣していた。 「ごめん、俺まだイッてない……!」 「ちょっ……絶倫すぎ! ふざけんなっ……んんっ……」 バックで再び挿入しつつ、宮下のモノを手でしごく。 「はあっ……んあ……ず、ずっと射精……させやがって」 憎まれ口を叩きながら、彼自身も腰を動かしている。 「に、仁和」 「な、なに?」 「……ち、ちゅーして」 挿入したまま、キスをする。 宮下は頬を赤らめたまま、涙で溢れた目を瞑った。 「んちゅ……んっ……」 「か、可愛い」 「は……!? ざ、ざけんなっ!」 宮下は息を切らしたまま、俺を床に押し倒すと、腰の上に跨った。 「んっ……」 自ら俺のナニをズブズブと腰に沈めると、キツく締め付けながら、思い切り俺の上で動く。 「そ、そんなことされたら……もう、出そう……!」 「イけよ! ナカに出せ……!! 俺も……んっ……!」 宮下の身体が大きく痙攣し、白濁液を吐き出す。 俺は彼の体内に、自分の欲望を思いきりぶちまけた。 ****** 「い、いつのまにか卒業要件満たしてたな……」 「確かに、アハハ……」 宮下が俺の胸に顔をうずめてくる。俺はそのまま、彼を抱きしめた。 「意外と甘えたさんじゃん」 「うるせー、甘えて悪いかよ」 しばらく、二人で抱きしめ合う。 このままずっとこうしていたら、溶けて一つになってしまいそうな幸福感。 「……こんな気が狂ってるような世界だけど、俺たちなら二人で絶対幸せになれるよ」 「……おう」 宮下が静かに笑う。 見る人を安心させるような、優しい笑顔だ。 「あと、この世界に来たからには忘れちゃいけないことあるよね」 「なんだよ」 俺の胸の上にへばりついていた宮下が、不思議そうに首を傾げる。 俺はニヤリと笑った。 「ここ、あらゆるグッズが揃ってるじゃん? 色んなプレイ、試そうぜ。まずは、ゼウスが捨ててったバイブ」 「……上等じゃねーの。今度は仁和が体液も何も出せなくなるくらい、コテンパンにやっつけてやふから! なめんなよ」 バイブのスイッチを入れると、ありえないくらいの幅でで振動する。 俺たちは顔を見合わせると笑った。 これからここで宮下と過ごす日々。それが俺は心底楽しみでたまらない。 俺たちの人生は、ここから始まるのだから。 【終わり】
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