祈りを込めて、あの子は翔んだ。

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 父上。  確かに、二人の姫は嫉妬に狂っております。しかし、本来ならばとても優しい性格でございます。それは、私が誰よりもよく知っていること。どうか、どうか……二人の姫君を責めることなきよう。やっと私は、正解を見つけることができたのですから。  私はその手段を、占い師に提示しました。そして、その方法を取れば、三つの国が再び手を取り合い、平和への道を歩むことができるようになることを知ったのです。  そう、私は消えればいい。  私という存在がなくなれば、二人の姫君は恐ろしい悪夢から目を覚ますことでしょう。己の行いを悔いて、浅ましい嫉妬が怪物となること、全ての幸せを食い尽くす悪魔となってしまうことに気づいてくれるに違いありません。  父上に信頼して政治を任せていただいていたのに、このような結末になってしまったこと、深くお詫び申し上げます。  それでも私は、赤の国一つの発展より、ひとりでも多くの無辜の民の幸福を願いたい。願うために力を尽くせる一人の人間でありたいのです。我が身と我が国のことだけを考えて自分勝手であるようでは、真の王足りうる存在ではない。己がそのような人間に堕ちること、私自身が何より耐え難いのです。  この手紙を投函した後、私は空を翔ぼうと存じます。  祈りを込めて、震える足を叱咤して。  争いになっては困りますので、もしこのような息子の言葉を聞き入れてくださるのでしたら、後継は次男のルミエールを指名しておきます。三男のクラウスは少々心持ちが優しすぎますし、自身も王にとは望んでおりません。是非ルミエールの補佐として置き、今後も兄弟仲良くこの国と世界の未来を繋いでいってくださいますよう、父上からもご教授願いたく存じます。  それでは、長くなってしまいましたが、筆を置かせてください。  愛しております、父上。  どうかルミエール、クラウスにも同じようにお伝えください。  そしてできることならば二人の姫君に、妻として迎えてやることができずに申し訳なかったとお詫びをお伝えください。そして、私の死を少しでも悼んでくださるというのならば……もう嫉妬の悪魔などに惑わされず、末永く手を取り合ってくれるようにとお伝えいただければと思います。  それでは。  生まれ変わった先、また貴方の息子として産まれてくることができることを願って。  貴方の息子、オーガスト・ラ・レディアンヌより。
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