祈りを込めて、あの子は翔んだ。

3/4
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
 そう。  私のせい、だったのです。  それぞれの国の国王が、それぞれの姫君を私の婿とすることで、同盟関係を強固なものにしようとしていたせいだったのです。この国の跡継ぎである私の妻ともなれば、ある程度赤の国の政治に口を出すことも可能になりましょうから。  いや、最大の問題は。国王陛下以上に、それぞれの姫君が本気で私との婚姻を望んでしまっていたということ。私は己の愚かさを呪いました。どちらの姫君にも幼い頃から恋愛感情を向けられていたという事実。手紙を続けることにより、その気持ちをどんどんふくらませていったという現実。そして、煽るだけ煽っておきながらその自覚もなく、私が彼女達の気持ちに一切気づいていなかったという恐ろしい真実に気づいてしまったのです。  彼女達は、けして引き下がることをしないでしょう。。  私は占い師に、いくつかの選択を提示した上で未来がどう変化するのかを占ってもらいました。  しかし、どの道も、破滅の未来を避けることは叶わなかったのです。私がルミリア姫を選べば、青の国は勢いをまして黄の国を滅ぼし、黄の国が滅ぼされたことを恨みに思った親黄国のいずれかが青の国と赤の国を侵略してくることになる。逆も然り。私がローザ姫を選ぶと、黄の国が青の国を滅ぼしてそこでもまた報復による戦争が始まるのです。そして、最終的には全ての国がほぼ滅んでしまいます。  別のやり方も考えました。私が弟に王位を譲って、次期国王ではなくなったことを示すのです。そして、どちらの姫も取らないと宣言いたします。王位継承者でなくなれば、国王達が私に娘を嫁入りさせるメリットはなくなりましょう。そして、どちらも選ばれなければ、嫉妬で片方の国がもう片方を滅ぼすこともなくなるはずなのです。  しかし、それでもダメでした。国王は諦めようとしても、姫君達は“王位継承者でなくなった”私のことでさえも諦めてはくれないのです。赤の国そっちのけで、二つの国は結局戦争を始めてしまいます。そして他国をも巻き込む、世界大戦が始まってしまうのです。  私は考え続けました。  二人とも嫁に取る、なんてことはできるはずもありません。そもそも、私はどちらの姫君も愛しく思う反面、妹のような気持ちがとても強いのです。正しく恋愛感情を抱いてもいない相手を嫁に貰うなど、そのように失礼なことなどできるはずもない。姫君をそれぞれ説得し、愚かな争いをしないように告げるという手も試しました。しかし、私の願いであっても彼女達はけして聞き入れてはくれないのです――あまりにも、悲しいことに。  もはや彼女達は、本当は私を愛してはいないのでしょうか。  私の心は、彼女達にはどうでもいいのでしょうか。  ついぞ私は、そのような恐ろしいことまで思うようになってしまいました。そしてそのたび、幼い頃の愛らしく、優しかった二人の姫君との日々を思い出して涙に暮れる毎日であったのです。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!