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ならば、と男は次の問いを考えた。
「…なるほど。では次。もし私が生存しているが、その肉体を操作している者が私ではない場合、お前はどうする?」
「…→…→…」
彼女が沈黙する。これを見たかったのだと男は満足げに鼻を鳴らした。
さぁ、どのような答えを導き出すかな。
そんな思いで待つと遂に彼女の口が開いた。
「私は…主人の生命の維持を優先致します。しかし今の問いの想定の場合、マスターの肉体は存在しますが、その内部にあるものはマスターの生命では無いものと判断します。
そのままの状態では主人の肉体の完全性を損なう危険性があります。
その為、私はマスターの肉体から『マスターでは無いもの』を排除するでしょう」
意外な答えに男は目を見開いた。
てっきり自分の中身が自分でなくなっても普通に追従すると思っていた。
「…それはその私の中のものを殺すということか。私の肉体を破壊してでも」
「是(Yes)」
その情景を考えるとあまり気分の良いものではなかった。
人間であれば義を重んじるが故に、などと言うのであろうが、機械の出した理由は合理性がありすぎた。
逆に『可能性がある』というだけで殺されるのかと思うとちょっと悲しくなった。
「わかった。もういい。私は寝る」
「お休みなさいませマスター」
執筆の続きをする気分ではなくなった男は、膝掛けを肩までかけてそのまま椅子で眠るのであった。
…
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