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「じゃ~ん!雪ダルマ」
洸が作った雪ダルマは結構デカかった。
汗をかき、暑くて上着を脱いでしまうぐらい労力がいったんだろう。これは造るの大変だっただろうなぁと思う。
1メートルぐらいの大きさのそれは、形が少しイビツで、表面がボコボコしていた。
目はペットボトルの蓋を黒く塗りつぶしたモノがくっつけられて。
目と目の間が心なしか少し離れバランスが悪いのは愛嬌か。
鼻は定番のニンジンだ。
「今日、お店休みだなぁ、と思ったら何故だか、早く目が覚めたんだ。
いつも俺の布団を剥がして起こす梶さんは、イビキかいて寝てるし。
窓の囲いの隙間から差し込む大陽の光に、外は良い天気な気配がして。なんだか躯がウズウズしちゃった!」
―――躯がウズウズって、子供かよ!
まぁ、洸ならあるかもな。
…こいつ姉に似て好奇心旺盛だし。
それより、俺、イビキかいて寝てるのか?
自分の知らない事とはいえら好きな子の前でのそれは…少しショックな事実かもしれない。
「そしたら、何だか無性に外に出たくなったんだ。
外に出たらこの雪質だし。少し湿った雪は雪遊びに最適だろ!
スノボに行きたいとこだけど、俺、今膝痛めてるし」
そういえば、先週階段で転んでたよな、洸…お前、おっちょこちょいだもんな。
―――洸が起こしてくれたら、一緒に雪ダルマ作れたのに。
洸と一緒に子供に戻って遊ぶのは楽しいに決まっている。
最近鬱々としていたこととか、全部忘れて、雪で遊ぶ―――そんな時間を想像するだけで、自然に笑みがこぼれた。
視線を少し上に上げれば、目の前に広がる昨日の嵐が嘘みたいな澄んだ青空。
冬の鉛色の空を塗り替えるような、晴れやかな空がやけに清々しかった。
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