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「洸、これ、一人で作ったのか?」
「他に誰がいるのさ。因みに名前はカジえもん。力作だろー?そっくりだろー?」
―――カジえもんって誰よ?
「今、カジえもんって誰だって思ったでしょ?」
「……思ってない。」
「絶対思ったって!そういう顔してたもん。全く素直じゃないな、梶さん」
「うるさいぞ。じゃあ、そっくりって誰にだよ?」
「そんなの梶さんに決まってるじゃん」
「どこがだよ?」
「掃除が得意で、目が離れてるところ!」
「掃除が得意な雪ダルマなんて聞いたことないぞ」
「だって、ほら。
カジえもんのお陰で雪掻き知らずだよ。勝手口の周り綺麗になった」
―――はい、はい。
洸の訳のわからない理屈にどうこう言っても始まらない。
つまりは、俺は洸の目には、掃除が得意な目が離れてる人間に見えてるってことだ。
「梶さん、今日は笑ってる」
そう言って俺の顔を覗きこむ洸。
洸の瞳の色は、洸が好きなチョコレート色に煌めいていた。
「最近、梶さん、なんか考え事してたみたいだったからさ。梶さんが元気が無いのは何だか俺も淋しくて――――クシュンっ!」
―――ほら、だから言わんこっちゃないだろ。
俺は、くしゃみをした洸の顔に手を伸ばすと、両手でその顔を挟んだ。
案の定、その顔はつめたく冷えきってら鼻の頭は赤くなっていた。
「…だからって、なんで、雪ダルマがお前の上着を着てるんだ?それから帽子も、手袋も、だ」
「作ってるうちに暑くなっちゃって、脱いじゃった。それに、カジえもん寒そうだったんだよ」
「何を言ってるんだ、お前は」
―――そろそろヤカンの湯も湧く頃だろう。
「おいで、洸。中に入ろう」
朝日に照らされたカジえもんが、そんな俺たちを見つめていた。
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