*冬の朝*

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だが今日は定休日。 個人で営むこの店は基本不定休だが、毎月第2日曜日だけは定休日と決めている。 何故だと言われても、父親の代からずっと第2日曜日が定休日で、俺の代になってもそのままだというだけで深い理由は特にない。 この喫茶店件住居の家は、築40年以上の古い家屋だった。 昨夜から降り始めた雪は、天気予報の言うところの、この冬最大級の寒波とやらのせいで、深夜には強い風と共に吹雪に変化し、 ひゅゅう――と悲しげな音色の雪の吐息に窓ガラスは夜じゅうミシミシと軋んだ。 明日の朝は何㎝ぐらい積もるだろう――。 ガタガタと窓枠が揺れる音がする。 二重サッシではない部屋の窓を激しく揺らす音を子守唄に頭に浮かんだのはそれだった。 でも、店の前の除雪の為にいつもなら気にする朝の積雪量も、休みならば…さして気にしなくても良く、“起きたらやろうか”ぐらいの気楽なものだ。 朝寝坊が許されるそんな贅沢な一日の始まりは、真綿にくるまれたような、そんなぬくみに包まれた幸せな時間だ。 吹雪がやんで――降り落ちてくる雪に、すべての音が吸収され、その雪に閉じ込められたかのような無音の時間。音の無い―――フユノオト。 フユノオトが奏でる静かな刻を、緩やかな微睡みに包まれ、店のこと一切を気にせずのんびり出来る贅沢な冬の朝だった。
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