*居候の君*

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男しか好きになれない――その事実に悩んでいた俺は、苦しい気持ちを誰かに聞いて欲しくて親友の佳世へと打ち明けた。 佳世ならきっと分かってくれるんじゃないか。そう信じて。 「いいんじゃない? だって、それが貴方なんでしょう」 佳世は軽くそう口にすると、俺の悩みがなんでもないことのようにふんわりと微笑んだ。 人が凄く悩んでいるのに。 佳世にだって打ち明けようかどうか凄く迷ったんだ。そんなあっさりした言葉はないだろうが―――佳世の態度に腹が立った。 「なんだよ、人が真面目に――――!」 「そうだね。君は真面目すぎるんだと思うよ」 「どういうことだよ」 「悩んでも仕方ないってこと」 「誰だって、好きな人に嫌われるのは嫌だろうが」 「そうだね。でもそんなの伝えてみないと分からないじゃない。諦められるならその程度の気持ちだってことだよ。 そもそも好きになるのって自分で止められないし。だから、悩んでも仕方ないんじゃない?」 「だからって悩まずにはいられないだろ」 「君は真面目だね。でもそこが君の魅力」 「佳世は適当だなぁ」 そうだ。佳世の言う通り、悩んだところで好きな気持ちは止められない。 自分自身を偽ることが出来ないから苦しいのだ。 どうにもならない自分の気持ちを否定するのは不毛だ。 相手にぶつかっていく強さもないのに、想いを伝える事が出来ないでいる苦しさに悩むのは真面目なことだろうか。でも、それが俺なんだから仕方ないと思えばちょっと楽になる。 腹が立ったのはほんの束の間。 俺を否定すること無くふんわりと微笑んだ彼女の軽やかな態度は俺の心を少しだけ軽くしていった。 こんな風に仲の良い俺達だが、双方に恋愛感情が生まれることはなく。 今ではあいつは結婚して、今では男児と女児の二人のママだ。高校で出逢って以来、俺たちの関係はずっと親友と言う形で落ち着いついていた。
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