*君がいない*

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いつもであれば、俺が起床し身支度を済ませた後で洸を起こしてやっていた。 いい大人なんだから一人で起きられるだろうと言えばそれまでなのだが、朝が弱いらしくギリギリまで寝せてやりたい気持ちもあったから。 だか今日は定休日。 俺も少しのんびりしたくて、布団に入ったまま洸に声を掛けてみる。 ―――あの唸り声が聞こえないなんて、おかしい。 この店兼住居は古い建物で、住んでいるのは俺一人だしなと、部屋にはエアコンが無かった。 反射式の石油ストーブが唯一の暖で、寝る時には消してしまう。 だから朝の部屋の空気は冷えきっていた。 日々の日課である洸の不機嫌な声が聞こえてこないのが気になった俺は、冷たいフローリングの床の上を裸足のままソファーベッドの方へ移動する。 裸足だから足の裏が冷たくて、爪先立ちでソファーベッドまでたどり着いた。 「洸?」 もしかしたら、寒くて布団に潜る洸には俺の声が聞こえないのかもしれない。 俺の腹の虫が再度鳴った。 休みだし、近所の美味しいパン屋に洸と一緒に行きたくて洸を起こす。 でも、その固まりからは何も反応が無い。 ―――なら! 我ながら意地悪だな、そう思いつつ。 俺は、ソファーベッドの布団のその盛り上がりをガバッと勢い良くめくり上げ、布団を剥いだ。
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