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父は借金で蒸発、母は男を作って出ていった。
必死になって働いたって利子の返済がやっとな私はとうとう裏のマーケットで売られた。
「落札!」
その声と歓声引き渡し部屋へと向かった。
泣き崩れる私
「俺が憎いか?」
月明かりに照らされた後ろ姿
「いいえ。これで借金が返せます。ありがとうございます。」
涙をぬぐいながら言った。
目隠しを外される。
「最初に選んだのはお前だろ?」
「はい?」
「俺に手を差しのべてくれたのはお前だ。」
「あっ、この人を覚えてる。」
幼き日の記憶をたどる。
「遅くなってすまなかった。随分と辛い目にあったんだな。」
まだ地べたに座る私を彼は震える手で抱きしめ涙の後を指先でたどり悲しそうに微笑んだ。
「そうか…私は選ばれたんじゃなくて、選んでいたんだ。」
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