犬の手と私の無知と日常。

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「猫の手も借りたいわ。」 夜8時半。 どこにでもある激安居酒屋の席で友がふと口にした。 新人の遅刻癖が治らず、上司から教育係のお前にも責任があると、みんなの前で怒鳴られた。憤りの感情が心の底からグツグツと湧いて鎮まらない。 2年付き合っているバーテンダーの恋人と同棲を考えている。だが、日々小さな衝突が絶えず、また結婚を考えると色々な壁がある。最近関係に疲れが出ていて、この先が不安。現在も喧嘩中。 母親から「彼氏を連れてこい。」と、長年いないのに電話でしつこく言われて、困っている。次実家に帰ったらお見合い写真を見せると母親からの脅しがきていて恐ろしい。とりあえず彼氏を作るため出会い系のアプリに登録してみたが、あまり気が乗らない。 20代後半に突入した女3人。 仕事に恋愛に年齢に伴なった悩み事など色んなものが、ポロポロではなく、ドバーと水が出るように口から流れ出る。 月に1回の女子会は、暴露大会と化した。 その中の一人が 「仕事が忙しくて、身体のあちこちが痛い。」 と肩を摩りながら、しかめっ面で言った。 そして、冒頭に書いた、 「猫の手も借りたいわ。」 と一言。 すると、もう一人の友人が、 「私は犬派だな〜」 と、ハイボール片手にぽつんと呟いた。 「ん?」 (言葉のキャッチボールができてないぞ。 どういうことだ?) (犬派?猫派?) 会話は別の話題に変わったが、私の頭の中でこのフレーズがこびりついて離れなかった。
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