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電車が最寄り駅に着き、ドアにもたれかかっていた体を戻して慌てて降りた。
すこし前まで、楽しくキラキラした世界をお酒とお喋りをおつまみに味わっていたのに、今はどうしようもない羞恥心でいっぱいだ。
ゆっくりゆっくり白い線の上を歩きながら、思考を巡らす。
気づくと下ばっかり見ている。
マイナスなことを考えると気持ちが下へ下へ行くのと同時に目線も下にいってしまう気がする。
(いかん。いかん。)
頭を上げて、夜空を見上げた。
丸くてじゅんつゆ飴のように金色の月がとても綺麗で私は足を止めた。
しばらく、見惚れていたら、自然と心が落ちつてきた。
美しいものは興奮と安らぎと大きな癒しを与えてくれる。
その時、私は思った。
(猫じゃなく、犬だったら?)
「犬の手も借りたい。」
(どんな意味にしよう。)
なんだかワクワクしてきた。
『犬の手も借りたい』
犬は平和を好むとされている。テレビで犬は鳥同士の喧嘩を仲裁したり、人間の夫婦の喧嘩にも敏感だと種族関係なく平和を好むと言っていた。その性格を活かして、喧嘩や亀裂が始まりそうな時に犬のように止めに入って欲しいという意味。犬のように忠実で優秀な存在が欲しいという意味。営業をとってきて欲しい、嫌な時でも場の空気を読んで頭を下げなくてはいけない時などの隠語でもいいなぁ。
私の頭はそんなに柔らかくないみたいだ。
思っていたよりもなぜか面白くないものができてしまった。
まあ、それでもいいか。
面白くなくても、今日は「猫の手も借りたい。」と「私の無知」という収穫があったのだから。それに月に一度の吐き出し会もあったことだし。
こんな日常もいつか過去になってしまう。
つまらないことも恥ずかしい思いもちゃんとした知識も全てが色鮮やかなスパイスだ。と私は思う。
というか、そう思える人間になりたい。
家に着いて、ドアの鍵、猫のマスコットキャラクターがついた鍵を鞄の中で手探りで探す。
なかなか見つからない。ガサガサと右左手を動かしてやっとそれらしきシルエットに触れた。
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