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夜。
「行ってくるよ」
「いってらっしゃい。」
友市を笑顔で送り出すと
珠子は半纏を羽織った。
今から友市のことをつけるのだ。
疑いたくはない。
でも疑う要素はあるのだ。
疑うしかない。
友市はキョロキョロ周囲を落ち着かなさげに見渡しながら歩いている。
視界に入らないように少し距離を保ちながら
歩いていくと
やがて一つの建物にたどり着いた。
新宿宿で一番大きい宿だった。
迷わず入っていく友市。
躊躇したが仕方がない。
珠子も何気なく入っていった。
(それにしても大きい宿)
この辺で一番大きな宿場町の宿らしく
たくさんの人が忙しそうに行き来している。
たらいを抱えて走る男に
ぶつかりそうになりながらも
友市を追っていくと、
ある部屋の前へたどり着いた。
「俺だ。」
友市が声と共に戸を叩くと
「お入り」
女の声がした。
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