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珠子は心が冷えていくのを感じた。
やはり浮気をしていたんだ。
「珠子さん愛してる」
っていつも言ってくれていたのに…
「なぁ、うめ。あと5日で東北にたつ。
お前は子供を連れて帰れ。」
うめ?聞いたことがある。
友市の故郷の妻だったはずだ。
「いやだね。お前さんさ。せっかく私たちが
長州からはるばる江戸までやってきたのに
自分の家に案内しないどころか
帰れ。とはどういうことだね?」
うめの声が大きくなる。
「だから、何もやましいことはないって。
危ないし俺は東北に行くから帰れ。って
言っているだろう。」
「ふーん。じゃ、お前さん子供たちに
顔も見せないで行くのかい?
いつも夜中にこっそり来て。
まるで人目を忍ぶように」
「だから何もないって!」
何かを投げる音がする。
「まさか、江戸娘相手に
浮気してるんじゃないだろうね。」
「してない!」
動揺したのか、戸にぶつかる音がする。
「あーやだやだ。こんな姿子供に
見せらんないもんね。
そりゃ寝静まった頃に来るわけだ。」
その後も2人の話は続いていたが、
珠子は聞こえなかった。
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